FF ニ次小説


 迷路のゴールまでたどりついた少女に、エドワードも見覚えがあった、しかしザックスはきょとんとした顔をしている。
「ああ、セヴンスヘヴンの……たしか、名前はティファちゃんだったっけ?」
「はい、ティファ・ロックハートです。」
「俺達がラストなんだけど、まず希望を聞かせてくれる?」
「ん?クラウドとの2ショット写真!!」
「OK。じゃあ俺とジャンケンだ。」
 ティファはクラウドの言葉にうなずいた。
 ジャンケンの結果、ティファが勝ちクラウドと2ショット写真を取る事になった。しかしティファはちょっとむくれてエドワードを指さして言った。
「ちょっとそこの人、その白いコートをクラウドに着せてくれる?」
「なんだ、白のロングでいいの?エディ、貸してくれる?」
「俺のを着たらぶかぶかで白いワンピースになるぞ。」
「エディ、あとで覚えていろよ。」
 そう言いながらエドワードは脱いだ上着をクラウドに渡した。セフィロスの物とは違うマリン系の爽やかなコロンの残り香が鼻腔をくすぐる。
 ティファがクラウドを見てつぶやいた。
「それにしても悔しいなぁ、なんでそんなに綺麗なの?」
「今日は特別、女装させられてるからね。」
 ザックスがデジカメをもってカメラマンのごとく注文を付けじめた。

「はい、お二人さん。もっとくっついて、彼女〜〜笑顔!笑顔!!クラウド、せめて肩ぐらい抱いてやれよ〜〜はい1+1は?」
「に〜〜!!」

 クラウドに肩を抱かれて笑顔で写真に写る少女に、セフィロスはちらりと嫉妬の視線をなげかける。しかしティファは全く気がつかないばかりか、きゃあきゃあと喜んでいた。
 クラウドがエドワードに白のロングを返すとすぐに次の人が来た。
「ごめんザックス、ティファを出口に送ってあげて。」
「ああ、もう次が来たか。はいはい、お嬢さん出口はこっちだよ。」
「え〜〜?!もうお別れなの?ねえ、クラウド。今度いつお店に来てくれる?」
「そうだな、7番街は今ブルーゾーンだから来週にでも遊びに行くよ。」
「約束だよ。じゃあね!!」

 ティファは最高の笑顔を残して迷路を去って行った。後ろでランスロットとセフィロスがこそこそと話していた
「何ですか?あの少女は。」
「幼なじみらしい。例のアバランチのリーダーの店で働いている。」
「なるほど、セヴンスヘヴンですか。」
 目の前に来たゲストとクラウドが何やら話しているのを横目で見ながら、セフィロスは先程から鋭い視線を感じるので視線の先を探す。迷路の中をどこかで見たような男が歩いていた。

「ほぉ、噂をすればセブンスヘヴンのマスターではないか。」
「隊長、よそ見していないでゲストの相手をお願いいたします。」
「何だ?握手か?写真か?」
「は、はい。あ、握手を……」
「よかろう、但しジャンケンに勝たねば無しだぞ。」

 しかしゲストが勝つ事はなかった。
 セフィロスはあきれるほどジャンケンに強かった。エドワードが首を捻ると、クラウドがこっそりと理由を教えてくれた。
「わからない?隊長”あやつる”のマテリア使って、相手のジャンケンをコントロールしているんだよ。」
「よくわかるな。」
「ジャンケンする瞬間、魔力の発動を感じたんだ。ちょっと卑怯だよね。」
「凄いぜ、お前。今まで誰もサーの魔法の発動を感じた奴はいないはずだ。」
「それだけそばにいるってことかな。ふふふ……」
「惚気てやんの。」
 エドワードがクラウドのおでこを軽くつつく。クラウドも頬をピンク色に染めた天使の笑顔でエドワードを見ていた。
 エドワードの風貌は明るい栗色の髪に魔晄を帯びた明るいとび色の瞳、顔だちは秀麗ではた目から見れば美男美女の立派なカップルだ。会場のあちこちから冷たい視線がエドワードにつきささる。その中に絶対零度の怒気も交じっている事にエドワードが気がつきフリーズすると、クラウドが青い瞳をくりっとさせて不思議そうにのぞき込んだ。
「エディ、どうしたの?いったい。」
「お、俺。今月末まで生きていられるかな?」
「クックック、覚悟出来ているようだな、いい事だ」
「姫のペアご指名を受けた時点で腹はくくってます。」
「ほぉ、ペレスのところになどいないで特務隊に来い。貴様なら歓迎しよう。」
「うわ、キングにまで言われちゃいましたよ。どうするよ?俺。」
 セフィロスとエドワードの会話にザックスがつっこみを入れた。
「めでたく出戻り決定って?」
「あ、そうか。エディって2年前まで特務隊にいたんだ。でも、士官は二人も要らないよね?俺、入れ代わりですか?」

そこへ、まるで見計らったようなタイミングでリックが飛び込んできた。

「待ったー!!エドワードと姫の入れ換え反対!!」
「来た来た、クラスS並の実力を持つ一般兵。」
「リック、良く抜けたな。クラスSが何人か来ていただろ?」
「はん?!そんなもん姫に会いたい一心で一蹴してきたが、残念ながら何人いたかなんて覚えていない。」
 ザックスが呆れたような顔でリックを見つめ、軽く溜め息をつくと言葉を継いだ。
「ここから見る限り、お前はクラスA25人とクラスS10人を抜いてきている。見えていない所にも、あと10人ぐらいの気配がするから総勢45人抜きだ。ほとほと感心するな。」
「リック、条件を聞こうか。」
「俺の希望はただ一つ。二人ともこいつにサインを入れて欲しい。」
 リックが見せたのは離婚届だった。
 セフィロスの顔色が変わったが、その前にクラウドが怒りをあらわにしていた。
「リック、冗談にしてはひどすぎる。本気ならば覚悟するんだな。」
「本気も本気だ、お前が独り身になれば、まだかっさらえる隙は有る!」
「クックック、ならばまず俺を負かして見ろ!!」
 クラウドが圧倒的なパワーを開放する。その異様なまでのオーラに風が巻き起こった。リックが一瞬びっくりするがすぐに冷静な眼差しで組みかかった。
 リックは自分の実力を過信してはいなかった、実際クラスS並の腕を持っている。体力もクラウドより上だと思っていた。しかしクラウドとてこの2週間毎日のようにセフィロスに鍛えられてはいなかった。パワーも技のキレも2週間前とは格段に違っていた。
 まだソルジャーになっていない兵同士の組み手にはとうてい見えないので、ランスロットがあきれたような声を出した。
「キング、貴方と言う人は……」
「クックック……すばらしいだろ?私のクラウドは。」
 組み手はクラスS並の実力を持つリックが押され気味だった。

 リックは正直舌をまいていた

(ちょっと待てよ、おい。クラウドの奴こんなに強かったっけ?!)

 防戦一方で技を仕掛けるスキなど全くないリックにクラウドの瞳が冷たく光ると軽くジャンプをする。リックが身構えようとした瞬間に回し蹴りが既に決まっていた。
 その場で崩れるように倒れるリックを見て、ザックスがあっけにとられていた。
「うわ〜〜〜、リックを5分で気絶させやがった。」
「リックじゃなかったら秒殺だな。」
「二度と同じ事言って見ろ、リックの事嫌ってやるからな!」
 頭を振りながらリックが起き上がってきた。
「ちぇ!最近余裕でクラスS抜けるようになったから、もう勝てるか?って思ってたんだけど、本気のお前ってこんなに強くなっていたんだな。」
「俺が本気だったら今ごろカンパニーはぶっ飛んでるよ。」
 まだ怒りが収まらないクラウドが、冷たい瞳のままアルテマソードにはめてある2つの赤いマテリアを見せると、そのマテリアの力を嫌と言うほど知っているリックは両手をあげた。
「はいはい、おとなしく見守っててやるよ。ところでエディ、マジで来る気ない?」
「はぁ?ついさっき姫との入れ換えに反対してたくせに。」
「入れ換えじゃないなら歓迎。俺が姫を専任で守ってやれる。」
「言ってることとやってる事が矛盾してるぜ。」
「い〜の!ほれ、ザックスはとっとと彼女のところに行け。ここは俺が守る。」
「え?エアリス来てるのか?!エアリス〜〜〜!!!」
 ザックスが羽の生えたような足取りでいなくなった。

 リックがクラウドの前にいる事でクラスSもクラスAも全くと言っていいほど『無理なお願い』が出来なくなった。
 やがてザックスに手を引かれてエアリスがやってきた。

 エアリスはリックに見覚えが有るのでにっこりと笑った。
「あ、いつかは助けていただいてありがとうございます。」
「あ……いえ。仕事ですから。」
「へぇ、噂の花売り娘か。かわいいじゃん、ザックス。」
「でへへへへ……」
「うわ〜〜、しまりのない顔。」
「エアリスの望みは何?」
「えっとねー、セフィロスの奥様とケーキバイキングに行くこと!」
「は?ケ、ケーキ・バイキング?」
「俺じゃあ、かなえてやれないんだよ。」
「隊長。クラウディア様って甘い物が大好きだったんじゃないですか?」
「大好きも何も。この話をしたら喜んで電話するだろうな。」
「じゃあOKなの?きゃぁ〜〜!!嬉しい!!またクラウディアとデート出来る!!」
「で、デートって……あのねぇ (^^;;」

 鮮やかな笑顔を残してエアリスがザックスに連れられて行く後ろ姿を見送りながら、クラウドは少し悲しげな顔をした。エドワードがにやりと笑う。
「ふふっ、うらやましいんだろ?」
「何でわかるんだよ。」
「顔に書いてあるよ。午前中でクラスAの出し物は終わる、午後からは下級ソルジャーや一般兵達が模擬店なんかを出すから俺たちは自由行動だ。服ならあるんだろ?」
「え?い、いいの?」
「そのかわり治安部内は開放されているから、統括にお願いして本社の統括室で着替えるんだな。」
「エディ!ありがとう!!」
 クラウドは思わずエドワードの首に抱きついてしまった、とたんに彼の顔が引きつった。リックとセフィロスが凄い目でにらんでいたのである。
「ほ〜ぉ、サー・エドワードは命が要らないとみえる。」
「クックック、せいぜい可愛がってやるから明日から特務隊に来るんだな。」
 特務隊の隊長と影の隊長の冷淡な笑みを真面に浴びせかけられて、エドワードがフリーズする。その意味にやっと気がついたのか、クラウドが両手をあわせて拝むような仕草をした。