FF ニ次小説
 ブルーを基調とした店が近づき中にに入るとクラウドが喜んだ。
「うわ〜〜〜!!綺麗!!」
 青い瞳をきらきらさせながら、店の中一面に張り巡らされている水槽に見とれている。後ろからセフィロスが近づくとそっと背中を押した。
「早く行かないと後ろが詰まってしまうぞ。」
「あ……、ごめんなさい。」
 あわてて皆のところへと走り寄ると、クラスSソルジャー達がクラウドを奥へと導く。いつのまにかセフィロスと共に最奥に案内されていた。
「ふう……、また自分がこのような場所に座るのですか?」
 テーブルの上座にあたる最上位の直ぐ隣にクラウドは憮然として立っていた。ランスロットがにこりと笑って答えた。
「実力主義ですから。」
「ランス、今日ぐらいはいつもの通りではなくクジか何かで決めたらどうだ?」
「セフィロス…、くそ!!俺がお前の隣に座れないじゃないか!」
「ランス、こんな時ぐらい俺達に譲ってくれてもいいだろうが!」
 クラスSソルジャー達の会話に思わずクラスAソルジャー達がほくそ笑んだ。
「やった!!俺くじ運だけはいいんだ!」
「ふふん、もし俺がキングの隣をゲットしても譲んないぞ!!」
 皆、虎視眈々と憧れの英雄の隣の席を狙っているのを知ってクラウドが笑った。結局クジを引いてそれぞれ順に着席した。セフィロスの両サイドにはクラスAのエドワードとブライアンが、クラウドの両サイドにはクラスSのパーシヴァルとライオネルが座った。パーシヴァルが思わずガッツポーズを取っていた。
「ラッキー!!やっぱり俺ってくじ運いいんだ!」
 遠くからトリスタンとランスロットがパーシヴァルをにらみつける。
「30分交代だぞ!」
「うう〜〜、パーシヴァルめ、明日にもミッション入れてやる。」
「ランス……、いいかげんにしろ。」
 セフィロスに一括されてランスロットがしょげる。クラウドがその様子をにこにことして見ていたので、隣に座っているパーシヴァルが尋ねた。
「姫、ご機嫌ですね。」
「はい。隊長にプライベートで付き合える仲間がたくさんいた方が良いと思っていましたから、いいことです。」
 クラウドの答えに笑顔でライオネルが答えた。
「戦友から”親友”になって下さると、我らも嬉しいですね。」
 両わきのクラスSに笑顔をふりまきながら話すクラウドに、セフィロスがなぜがむっとしていた。
「やはり30分でチェンジだな、そのほうがよかろう。」
「それはそれは、次こそ姫のとなりを狙ってしまいますよ。」
 そういいながらランスロットが全員にグラスが渡ったのを確認してセフィロスに話しかけた。

「今夜は無礼講でよろしいですね?まあ、隊長とかサーとか、呼称は仕方がないとして、任務の話をしたらバツゲームでいかがです?」
「それならば私は黙っていなければならんな。」
「キングに雑談が出来るとは思っておりませんよ。」
「自分としては凄くお聞きしたいんですけど?」
「なんだ、ブライアンお前は4年前まで特務隊にいたではないか?」
「忘れましたよ、そんな昔の事。」
「輸送機の中での事なら色々とお聞きしてますけどね。」
「うわ!!ユージンそれ話しちゃ嫌だ〜〜〜!!」
「安心しろよ、姫。話すと命にかかわる。」
 その場にいた全員から笑顔がこぼれた。

 それからしばらく談笑したり席を変わったりして、楽しい時間を過ごして行った。
 そして時計が12時をさす頃楽しい宴が終わりを告げようとしていた。

 ガーレスによりかかるように居眠りをしているクラウドをセフィロスが優しく起こした。
「こら、クラウド。こんな所で寝ると風邪ひくぞ。」
 すると、寝ぼけているのか部屋にいるような感じで、クラウドはセフィロスに首に腕を回して寝ぼけ眼で抱きついた。
「う〜〜ん……、セフィおかえり。

 いくら自分達の仲をしっているクラスSとクラスA仲間の前とはいえ、いきなり抱きつかれてセフィロスがとまどう。クラウドがそんなセフィロスを訝しむように睨んだ。
「あ〜〜、セフィ ただいまのキスは?」
「クラウド、ここが何処だかわかっているのか?」
「ここ?」
 この時点でやっと頭がはれて来たクラウドがまわりを見渡した。見慣れた顔の仲間たちや上官達がにやにやと笑っていた。
「ただいまのキス…ですか?もうすぐご結婚されて一年だと言うのに、今だに新婚気分なのですね。」
「おかげで遠征の時なんて目のやり場に困りますよ。」
「姫、その寝起きの悪さを何とかしないと命取りだぜ。」
 ブライアンの言葉に真っ赤な顔をしてクラウドがセフィロスから飛びのくと、椅子に座って身体を小さくした。
 しかし揶揄される事なく冷たい目で見られる事も無かったので、クラウドはその雰囲気に首をかしげる。パーシヴァルがにこにこと笑っていた。
「おや?そのお顔は何かご不満でもあるのですか?」
「え?だ…だって。いつもなら皆で自分が同性婚しているのをやじったり、それこそ信じられないって感じで見るのに、それが無いのですよ?」
「何?いじめてほしかったの?」
「ちがうよ!!」
「我々としては氷の英雄をここまで人間臭くしてくれた姫に、感謝こそすれ…非難する事など出来ませんけどね。」
 パーシヴァルの答え以上は皆何も言わずにただ微笑んでいてくれた。なんとなくクラウドの身体のどこかがほっかりとする。

 その場での料金を皆で支払うとクラウドは5番街の駐車場に置いてある愛車のバイクを取りに行こうとするが、セフィロスに止められた。
「リック、トラックにバイクぐらい乗るだろ?カンパニーの駐車場にほおりこんでおけ。」
「え?だってそんな事したら明日出社する足が無いよ。」
「私も車を置いてきたから一緒に電車出勤だな。」
「なんでしたらお迎えに行きますよ?」
「クラスAでもトップを張れるリックがパシリをやるなよ。」
「リックにトップは無理。魔力が低いってことは魔防がほとんどないんだぜ、ステータス異常魔法かけられたらおしまいだ。」
「さすがだな、よくわかってるよ。」
「エディ、知っていたのか?」
「ああ、特務隊トップ5全員そうだからな。でも、あえてそれをやる気は無かった…後が恐いからな。」
 エドワードの答えにリックが首に片腕を回すとがしっとホールドした。
「この野郎、何が恐いんだよ。また可愛がられたいのか?」
「え、遠慮するよ。これ以上可愛がられたらマジで特務隊行きだ。」
 蒼い顔をしておびえるエドワードに、ランスロットが声を立てながら笑って席を立ったのがきっかけで、にぎやかにソルジャー達が去って行くと思わずクラウドがため息をついた。そしてセフィロスと共に5番街の駐車場に止めてある自分のバイクまで歩いて行った。


***



 翌日。クラウドの操縦するバイクがカンパニーの駐車場へと入ってきた。
 タンデム(二人乗り)のバックシートに乗っている男は、黒いロングコートに身を包みヘルメットからその銀色の髪をはみ出していた。
 バイクの音を聞き付けて駐車場の係員がゲートを開けると、クラウドがパスを見せて駐車場へと入って行く。単車用の駐車場へとバイクをほおりこむとヘルメットを取った。
 後ろの男もヘルメットを取る、ふわっと銀色の髪が広がった。
「お前の運転は恐いな。」
「信頼されてないですね。」
「おまえを信頼していないわけではないが、その細腕でよくこんなモンスターマシンを操っているモノだな。」
 ヘルメットをクラウドに手渡すと、セフィロスはさっさと治安部へと歩いて行く。その後ろ姿を眺めながらクラウドはヘルメットをシートの下に収納してから、遅れまいとあわててセフィロスを追いかけた。
 クラスS執務室の前で手をあげて別れた後、クラスA執務室へと駆け込む。ゴードンとアランがすでにいた。
「よお、おはよう。」
「旦那と同伴出勤してきたんじゃないのか?」
「ど、同伴…って、あのなぁ?昨日は何も言わなかったのに今日は朝からいじめるんだ。」
「ん?だってよぉ。こう言う時じゃないと俺達がお前をいじめられないだろ?」
「腕っぷしじゃかなわないもんなぁ。」
「だいたいお前をいじめるのは、すぐに顔に出るのが可愛くてなぁ…」
「ぶぅ!!」
 クラウドがキースの言葉にむくれるとちょうどエドワードが入ってきた。クラウドの顔を見るとクスリと笑って話しかける。
「姫、何を可愛い顔してるんだよ。唇とがらせてるとまるでキスを強請っているみたいだぜ。」
「エディ…、なにがいい??」

 いつもなら慰めてくれるエドワードにもつっこみを入れられて、クラウドがアルテマウェポンに入っているマテリアを指差しながら、冷淡な瞳でにっこりと笑った。
「メガフレアもアルティメット・エンドもコントロール出来ないけど、シャドウフレアかベータ、トライン当たりなら自由自在。このへんならピンポイントでかけてあげられるけど?」

 天使のような可愛い顔して笑顔で末恐ろしい事を平気で言う、ブライアンがそれを聞いていた。
「姫、お前そんな事出来るのか?」
「え?あ、ああ。隊長がやってたから見よう見まねでやってみたら出来たよ。」
「ブライアン、おまえ魔法部隊の副隊長だろ?出来るのか?」
「メチャクチャ言うなよ。隊長ですらそんな事したのを見た事ないぜ。」
 クラウドが不思議そうな顔をして指先に軽いファイヤをかけて見た。
「だって…こう言う事出来たら、ケーキのロウソク付けるの楽だよ。」
 クラスA仲間がクラウドの指先を不思議そうに見た、そして各々ファイヤの呪文をコントロールしようとして失敗した。
 いきなりの大きな炎に火災報知器が反応した。スプリンクラーが働きクラスA執務室が消火剤にまみれだした。ほぼ同時に隣のクラスS執務室から何人かのソルジャーが飛び込んで来た。

「一体何があったんだ?!」
「うわ!!消化剤まみれじゃないか!!」
「クラウド!無事か?!」
 消化剤の煙が落ち付くとクラスAソルジャー達がせき払いしながら姿を現した。それぞれがお互いの顔を見合わせてげらげらと笑った。
「ゲホゲホッ!!ブライアン、髪の毛真っ白だぜ。」
「ゲホ!!そう言うキースも日焼けした顔が白塗りだ。」
「姫なんて元が色白だから何処行っちゃった?」
「ゲホッゲホッ…ったく、クラスAなら魔法のコントロールぐらいしろよ。」
「姫、それは無理です。力は有ってもコントロール出来る人物はごくわずか、自分が知っているのはキングただ一人ですよ。」
「え?じゃあサー・パーシヴァルもこれ…出来ないんですか?」
 クラウドがもう一度指先に炎をちょっとたてたので、パーシヴァルとラルコートが絶句した。