それから3日後。広いがなにもない部屋に、たくさんの兵士達が集まっていた。
壁際には更に沢山の兵士達が整然と並んでいた。
統括のランスロットとセフィロスが姿を現すと、居合わせた兵士達が一斉に敬礼をした。
ランスロットが一歩前に出た。
「ただいまより、召喚マテリアの持ち主を決める為に、この場にいる全員に召喚マテリアを持ってもらう。見事召喚出来た者にマテリアをそのまま持ってもらう。では、クラスの低い者より順に前へ出ろ!」
前もって全体化魔法を使える者だけを選んでいた為、一番クラスの低い者でもクラスCソルジャーであった。順番にマテリアの詰まっているボックスの前に立つが、何のマテリアも持つことができずに、帰るソルジャーが続出していた。
やがてクラスBのザックスがマテリアボックスの前に立った。するとボックスの中のマテリアが3個ほど光った。
ザックスがその3つをもって発動させる。
「召喚シヴァ!」
氷の女王が姿を現し、まわりを凍りつかせる。すかさずセフィロスがファイガを放って温度を上げるとザックスが次のマテリアを発動させた。
「召喚イフリート!」
炎をまとって牛のツノのような頭を持つ召喚獣が姿を現す。部屋中の温度が一気に上がると、セフィロスがすかさずブリザガを発動させる。最後のマテリアはラウムであった。
「召喚ラウム!」
ザックスが発動させる前に、セフィロスとランスロットがその場にウォールを張り巡らせたおかげで、雷の魔法は封印された。
ランスロットがうなずきながらザックスに話しかけた。
「見事だぞ、その3個のマテリアはお前の物だ。」
「ありがとうございます!!」
そう言うとザックスがさがるのを見て、クラスAソルジャー達が感心していた。
「へぇ…やるなぁ、ザックス。だてに特務隊に3年もいないな。」
「あいつがあの3体を持ったって事は魔力だけならクラスAってことだぜ。」
「負けそう。」
「負けたくはないな。」
クラスA仲間がザックスの事を見直しているのを聞いて、クラウドは思わず笑顔が浮かんでいた。
「みんなが知らないだけで、ザックスは底力があるってことなんだよ。」
「そう言う事なんだろうな。隊長が欲しがっていたもんな。」
「サー・リーもか?俺の所の連隊長なんて酷いんだぜ。”いつでも入れ代わってくれてもいいぞ”何て言うんだ。」
「エディならそれもありだろうが、大変そうだな。」
クラスA仲間がこそこそ話していると、クラスSから怒鳴られた。
「クラスA!たるんでいるぞ!!次は貴様達だ!!」
「アイ・サー!!」
ブライアンが代表して敬礼すると、クラスAが順番にマテリアボックスの前に立つ。
さすがにクラスAにもなると、マテリアボックスの中から2個、3個と発動出来るマテリアをもらって帰ってくる。
上級者になると海竜リヴァイヤサンや地王タイタンなども発動出来る。ブライアンがリヴァイヤサンを、パーシーがタイタンをもらって帰ってくる。エドワードなどはオーディンを発動してクラスSをびっくりさせた。
これには魔法部隊の副隊長であるブライアンもびっくりする。
「うわ!!エディいつのまにそんなに魔力が強くなった?!」
「身体を鍛えられたから精神力や魔力も上がったんだろう?悔しいが、みんなリック達のお陰って事だよ。」
「じゃぁ…姫は?姫なら何を発動させるんだろう?」
キースがクラウドを見た時には、すでにクラスSを呼び出していた。エドワードがそれに気がつく。
「え?!なんで姫が後回しなの?」
「え?あ、うん。俺は既に2体も究極の召喚獣を持ってるから、辞退していたんだけど。サー・リーとの約束が有るから…」
「ああ、隊長あの2体が見たいっていってたもんな。」
クラスSともなると、さすがにクジャタやアレクサンダーを召喚する。しかし全員が終った後でも2つのマテリアが残っていた。
セフィロスがクラウドをまっすぐ見る
「クラウド・ストライフ、前へ!!」
「アイ・サー!」
セフィロスに呼ばれて、クラウドがマテリアボックスの前に立つと、残った2個のマテリアが赤く輝いていた。
手に持ったバハムートのマテリアがいきなりクラウドに話しかけた。
”我が主よ…願いがあるのだが…”
”え?俺にできること?”
”ああ、おぬしにしか出来ぬ事であろう。その2個のマテリアを発動してもらいたい”
”うん、聞いて見る”
クラウドがうなずくと、セフィロスとランスロットに向かって問いかけた。
「統括、サー・セフィロス。お願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「何だ?」
「貴方のお願いであればなんなりと。」
「この2個のマテリアを発動させたいのです。」
その発言にセフィロスがにやりと笑い、ランスロットが苦笑する。
「この2個のマテリアはおそらく貴様でなければ発動出来ぬであろう。この場にいるウォールを張れるソルジャー達!強烈な召喚獣が現れるぞ、全員で会場中にウォールを張れ!」
会場中のソルジャー達がウォールを張り巡らせると、クラウドが2個のマテリアを持って問いかけた。
”え?!竜王さん?!
”久しぶりだな…バハムート”
”貴様達、今まで召喚主を得られずに居たのか?”
”貴様のように運が良くなかっただけだ”
”竜王さん達、お友達なの?!”
”ええ、我が主よ。お呼び下さい、我が名は…”
"我もお呼び下さい、我が名は…”
クラウドが赤いマテリアをかざした。
「召喚!バハムート!バハムート・ネオ!バハムート・ゼロ!」
クラウドの召喚に3体のドラゴン型召喚獣が姿を現した。
三匹の竜王の姿に、その場にいる兵士達が思わず口をぽかんと開けていた。
クラウドが3体の召喚獣に擦り寄って、その頭を代わる代わる撫でると、おとなしく撫でられている。そんな3体のドラゴン達をランスロットとセフィロスが呆れたような顔で見ていた。
「キング、どう言う事ですか?」
「どうも、こうも無い。見たとおりであろう。」
「それにしても、あんな強い召喚マテリアが含まれていたとは。」
「あの2体も私が呼ぶ事を拒否した奴らなのだが、まさかバハムートの仲間とはな。気位が高い訳だ。」
クラウドがひとなでした後で、マテリアをかざすと、3体のバハムートがおとなしくマテリアに帰って行った。
続いてクラウドがもう一度召喚獣を呼ぶ。
「召喚!ナイツ・オブ・ラウンド!!」
13人の騎士の姿をした召喚獣達が姿を現した。
一列に整列して、クラウドに対して一礼すると、クラウドが召喚獣達に近づいて一人づつ握手を求めた。驚いたことに騎士達が傅いて握手に応じた。
ブライアンがあきれ返ったように大声を出した。
「うわ!!あいつ究極の召喚獣達をコントロールしているぜ!」
「末恐ろしい奴だ。」
クラウドが赤いマテリアを掲げると、召喚獣達がマテリアの中に帰って行った。
クラウドがランスロットとセフィロスを振り返ると、隊長は軽くうなずき、統括は微笑んでいた。
「その2個のマテリアは貴方の物です。もう、誰にも呼ばれない事でしょう。」
「魔力だけなら、既に私を越えたかもしれんな。」
「そんな事はないと思います。きっとバハムートさん達は隊長が強すぎて力を貸すほどでもないと思っているのでしょう。何かあった時は力を貸してくれると思います。」
「どうだかな。気位の高い連中だ、そんな事になったら叱り飛ばされそうだな。」
ランスロットが姿勢を正し、周りを見渡して言い放った。
「これにてマテリアの配布を目的にした召喚魔法の発動を終る。」
ランスロットがひと声かけるとその場にいたソルジャー達が敬礼をする。
敬礼に対してランスロットとセフィロスが返礼をすると解散となった。
いきなりクラスA仲間がクラウドのまわりに集まった。
「バハムートって3体もいたのか?!」
「そうみたい、ネオはギガフレア ゼロはテラフレアって技を持ってるって言っていたよ。」
「すっげ〜〜〜俺、感激しちゃった〜〜!!」
キースが思わずクラウドに抱きつこうとして、遥か後ろにいた男ににらみつけられる。おまけにいつのまにかキースの後ろにリックが立っていた。絶対零度の怒気をはらみながらリックがキースに囁いた。
「へぇ〜〜〜勇気有るなぁ、そんなに特務隊に扱かれたいの?」
「い、命だけはお助けを〜〜〜!!」
キースが降参の意志を示すと、リックから絶対零度の怒気が消えうせる。同時に壁際を取り囲んでいた下級ソルジャーや一般兵達からどよめきが起こった。
「すっげ〜〜〜!!バハムート始めて見た!!」
「しかも3体もいたなんて知らなかった。」
「やっぱりサー・クラウドって凄いんだ!!」
一般兵の言いたい放題の言葉に下級ソルジャーがどなりつける。
「当たり前だろ!しかも究極の召喚マテリアを自在に操っていたんだぞ!その凄さが貴様達にわかるか?!」
言われてみて一般兵達に思い当たることがあった。
「そういえば、技を出していなかったよなぁ。」
「あ!!そうだ。召喚獣が姿を見せただけで、何もせずに帰って行ったんだ。」
「それがどれほど難しい事か、貴様達にはわからないだろうな。魔法を際限無くかけることは簡単にできるが、ピンスポットで軽くかけることのできるソルジャーは俺が知っている限りサー・セフィロスとサー・クラウドの二人だけだ。」
クラウドが指先にファイヤをかけられるのは、カンパニーのソルジャー達の中でも有名な既成事実だった。
自分達の上官であるクラスAソルジャー達が、影で一生懸命コントロールしようと努力しているのを、見ていたソルジャー達がたくさんいて、その理由を聞いているからである。
自分達の上官達がどんなに苦労しても会得出来ていない事を、サー・クラウドがすでに出来るという事実が、ソルジャー達の中でクラウドを尊敬出来る人物として位置づけられていた。そのうえ究極の召喚獣を4体も発動させたのを直に見てしまったのだ。彼らに取っては英雄セフィロスに継ぐソルジャーである事をまざまざと見せつけられた。そしてその事実はサー・セフィロスが隣に立たせたい男であるという事を納得させる事実であった
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