ダイヤウェポン相手に、いくらクラス1st以上の実力がある隊員達ばかりとはいえ、たった28人で戦闘を挑むと言い切るクラウドに、二人のクラスSソルジャーが頭を抱えていた。
「もしルビーみたいな奴だったらどうされる気なんですか?!」
「エリクサーは沢山持たせてもらえないんですか?」
「残念ながら、特務隊にエリクサーの支給は2本だけです。」
「ちょっと回復魔法が足りないのは確かですね。ブライアン、一時的に特務隊に来る?」
「お?呼んでくれるなら行くぜ。」
「なんだったら俺も行くか?」
「エディなら大歓迎!」
同じクラスA仲間でハイタッチをしている横で、パーシヴァルとリーが怒りに震えていた。それに気がついて3人の仲間が思わず肩をすくめる。
「姫、ちょっとやり過ぎかもよ。」
「あ〜あ、クラスSともあろうお二人が…」
「ん〜〜、でも二人が来れば本当に十分だしなぁ。」
パーシヴァルがクラウドの肩を掴んですがるように訴える。
「私は貴方が…貴方がまた自分を犠牲にしないか心配なのです。貴方がいなければキングはどうなるか…お願いです、無理をしないでどこか一隊をつれて行って下さい!」
「ソルジャーだけならまだしも、一般兵が使えるとは思えません。足手まといになるだけです、命に係る事ですし連れてはいけません。」
クラウドの一言にブライアンが突っ込みを入れる。
「良く言うぜ、一般兵。」
すかさずエドワードがブライアンに訪ねた。
「その一般兵に負ける俺達って何?」
副官達の態度も気にならないのか、リーがパーシヴァルに変わって訴えた。
「部隊から補助魔法と回復魔法のスペシャリストを派遣します。貴方の言う事なら聞くと思いますから…、だから…お願いです。」
クラウドが思わずため息をついた。
「自分の判断で決められる物でもありません、隊長と相談させて下さい。」
そう言うとクラスS執務室へと向かう。その後ろを従者よろしく、二人のクラスSが一歩下がって歩き出すと、気がついたクラウドがあわてて二人のクラスSを先に通す。
そんな二人の上官を見て、クラスAのトップを張れる男2人は苦笑いをしていた。
クラスS執務室に、二人のクラスSに先導されてクラウドが入ってくると、その場にいたクラスSソルジャー達が一斉に起立して敬礼する。
クラスSが敬礼した事で、クラウドが急に回れ右をして執務室を出ようとした。
「姫、御用ではなかったのですか?」
「クラスSソルジャーに敬礼される立場ではないですから。」
「パーシヴァルとリーに泣きつかれたのでしょう?ならば我らの中から貴方の配下になる者を選びにみえたのですよね。」
「クックック…負けたのか?」
「お二人の言うことももっともだと思います。我が隊の隊員は魔力のある者が少なく、自分が召喚魔法にかかりきりになれば、回復魔法をかけられる者が隊長とザックスしかいなくなります。」
「それでリーに部下を貸すと言われた?」
「はい。ルビーのように瀕死にならないと攻撃が効かない場合、どうするのかと言われて返答に困りました。」
「どうせお前の事だ。その場でブライアンとエドワード当たりに一時的に特務隊に来いと声をかけたのであろう。」
「はい。」
溜め息をついて肩をすくめるクラウドの後ろで、二人のクラスSがニヤニヤしている。そんな二人を一瞥してセフィロスが書類を4、5枚さらさらと書き、目の前に居るクラウドに見せた。
「それでどうだ?」
「上官の許可が取れるのであれば自分は了承いたします。」
そう言いながらクラウドが後ろを振り返り、二人のクラスSに書類を手渡す。書類にはそれぞれの隊のクラスA、クラスBのソルジャーの名前が6人ほど書かれていた。
自分が一緒に行けると思っていたパーシヴァルが思わず体を震わせて怒りを必死に押さえた。
「キ…キング、これはどう言う事でしょうか?」
「たしかに、こいつらならば回復魔法を十分使えますが、また貴方と一緒に戦えると思っていましたのに……」
「貴様達にはそれぞれやる事があろう。ダイヤにはコレで十分だ。それにクラウドを守るのは私の仕事だ。」
そう言うとクラスS仲間を見ると、皆、少しは期待していたのであろうか?がっくりと肩を降ろしている。
「何をそれほどしょげる?おかしな奴らだな、それほど死にに行きたいのか?」
「一度ぐらいはキングと姫と共に戦場に立ちたいのです!」
「約束したではないですか、ミッションによっては一緒に闘うと。」
クラスSの言っていることはもっともであるが、クラウドはあっさりと答えた。
「ええ。でも今回はそう言うミッションではありませんから、また次回ということでお願いいたします。」
「キング〜〜〜!!」
「諦めろ。クラウドがYESと言わない限り貴様達とは組まない。」
「危険だから…では答えにはなりませんか?このような任務にたくさんの兵をつれて行くのは、その兵を守り切れません。他の任務で可能ならばご一緒させて下さい。」
「ひ……姫。」
「と、言うことだ、諦めろ。ダイヤは我々が叩く。そうだな…封鎖はグレインのところでよかろう。」
「アイ・サー!!」
「私はやはり行けないのですか?」
「貴様は居残りだ、ミッドガルに何かあったら対応せねばならん。」
クラスS執務室で言い合いを続けていると、扉が開きランスロットが入ってきた。仲間を一瞥すると深い溜め息をつく。
「いいな、お前達は。私など行きたくても行けなくなってしまった。1番の戦友と思っていたのだがな。」
「私の1番の戦友と言うのであれば、何をするべきかわかっておろう?」
「わかっていますよ。はい、物まねのマテリアです。」
ランスロットからマテリアを受け取るとクラウドがお辞儀をした。
「ありがとうございます」
「お願いですから姫、二度と自分自身に刃を向けないように。」
クラウドは曖昧に微笑んでクラスS執務室を後にした。
* * *
その夜、自宅のキッチンで料理を作りながら、クラウドはなんとなくぼーっとしていたのか、部屋にセフィロスが帰ってきていたのに気がつかなかったらしい。愛妻が初めて出迎えなかったのにびっくりしたのか、セフィロスがあわててキッチンまで入ってきた。
「クラウド、無事か?」
「え?あ…セフィ。いつのまに帰って…ご、ごめんね、お迎え行けなくて。」
「いや、お前が無事ならそれでいい。」
「ごめんなさい、ちょっとぼーっとしていたみたい。すぐ作るから…んうっ!」
いきなりセフィロスが近寄ってきたかと思ったら、抱きしめられて口づけを受けていた。しばらく抱きしめられた後クラウドはセフィロスが耳元でかすかに溜め息をつくのを聞いた。
「セフィ…疲れているの?」
「ん?お前ではないが、クラスSの連中を抑えるのは至難の業だな。ガーレスなど明日からアイシクルエリア行きだというのに、ミッションを3日延期してでも参戦したいだなどと言うのだ。」
「俺って、そんなに信用されていないのでしょうか?いくらクラスA扱いとはいえ、やはり一般兵だし…まだ副隊長扱いになって1年めだし…」
「お前は良くやってくれている。さぁ、もう仕事のは無しはやめよう。どうやらまだ食事の支度が終っていないようだな、ひさしぶりに出掛けるか?」
セフィロスに言われてキッチンを見渡すと、まだじゃがいもを4つほど剥き終わったばかりで、後は何も支度をしていない状態だった。その事実にクラウドの蒼い瞳から涙がこぼれ始めた。
「ご…ごめんなさい。俺、俺…こんなんじゃ…あなたに…嫌われちゃう。」
自分のなすべき事すらやれていないということは、ありとあらゆることに精通する英雄のそばにいられないと思っているのか、クラウドは顔を覆って泣きじゃくった。
セフィロスはクラウドの涙にかなり弱い、かなりと言うよりは極端でもある。クラウドが涙を流したら、その場で両手を上げてギブ・アップだったりする。
「馬鹿、泣くなクラウド。私がお前を嫌う?!バカなことを言うな!私がお前を嫌いになる訳がなかろう?」
セフィロスはひとしきりクラウドの髪をすいて落ち付かせた後、クラウディアの扮装をさせて近くのレストランへと車で出掛けた。
レストランではいきなり現れた英雄とそのフィアンセのおかげでスタッフは緊張し、キッチンでは噂に高い美食家の英雄と三つ星シェフにべた誉めに誉められた料理の腕を持つスーパーモデルに、下手な料理は出せないとばかりに張り切って調理をしていた。
おかげで美味しい料理を堪能して、自室に帰ったセフィロスとクラウドは、そのままベッドへともつれ込んだのであった。
* * *
エアリスに呼ばれてザックスは彼女の両親と共に食事を取っていた。ガスト博士がザックスに尋ねる。
「そういえば、3日後にミッションだそうだな。」
「はい、ダイヤウェポンを叩きます。」
「ランスロット君が統括室で頭を抱えていたが、そんなに強いモンスターなのかね?」
「いえ、先月倒したルビーの方が遥かに強いですね。」
「ええ?!またぁ?うんもう、セフィロスもセフィロスよ。愛する奥様をよくもまあ戦場に引っ張り出せる物だわ。今度瀕死になんてしてごらんなさい、承知しないから」
天下の英雄相手に凄むエアリスもエアリスだが、そんな娘を見てにこにこと笑っているガスト博士も、流石である。
「そうだな、いくら愛妻家とはいえ、戦場に奥様をつれて行くのは考え物だな。」
「博士、クラウドは特務隊の副隊長なんですが。」
「ああ、そうでしたね。う〜〜ん、難しいな。」
「ザックス君が守ってあげれば、いい事じゃないですか。」
「もとよりそのつもりです。」
「きゃぁ〜〜ザックス、かっこいい〜〜!!…って、言えばよかった?」
エアリスの余分な一言に、思わずずっこけたザックスだった。
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