FF ニ次小説
 そして二日後、ミッドガル北部海岸で特務隊の隊員達が臨戦状態に入っていた。
 まもなく日の光を反射して銀色のボディを持つ星の厄災が姿を現すとともに、クラウドがバハムートを召喚した。ドラゴン型の召喚獣が姿を現し悠然と空を飛んでいた。
「ダイヤウェポンに向かってメガフレア照射!!」
 クラウドの命令と共にバハムートがメガフレアを照射すると、咆哮と共に晄の弾がダイヤウェポンに向かって放たれた。無属性の光のビームが浴びせられると、空を飛んでいたダイヤウェポンが地上に降り立った。
「総員、戦闘開始!!」
 言うが早く正宗を持ってダイヤウェポンに向かってセフロスがかけだすと、クラウドが一歩遅れてアルテマウェポンを握り締めてかけだした。リックがバハムート召喚を物まねしている間に後ろで控えていたブライアンが、リヴァイアサンを召喚する。
 召喚魔法でダイヤウェポンのHPが一気に減って行く。
 ザックスがバスターソードで切りかかるとダイヤウェポンのからだが震えた。
「ちくしょう!!物理攻撃がきかねぇ!!」
「ザックス、リミット技をかけて見ろ!」
 言われた通りにザックスが裏超究武神覇斬をしかけると、セフィロスがにやりと笑った。
「やはり、まともには切らせてはもらえぬか。」
 セフィロスが心ない天使をしかけると、ダイヤウェポンの中心を守っていたコアが開いた。
「クラウド、今だ!!」
「召喚、ナイツ・オブ・ラウンド!!」
 クラウドの召喚に13人の騎士の姿をした召喚獣がダイヤウェポンに切りかかっていく、即座にリックがものまねをするとダイヤウェポンが反撃をした。
 身体からビームが浴びせかけられると、戦っている特務隊の隊員達が全員片ひざをついた。
「回復!!」
 ブライアンの声と共に回復要員が特務隊にフルケアをかけると、真っ先に立ち上がったセフィロスが再び正宗を片手にダイヤウェポンに切りかかった。クラウドが立ち上がる前にザックスがひょいと抱えて後方へさがった。
「お前はそこで召喚士やってな!」

 そう言い残すとザックスはバスターソードかかえてダイヤウェポンに走り寄って行った。
「ザックス、あの野郎ーーー!」
 そう言いながらアルテマウェポンを握り締めて駆けだそうとするクラウドをブライアンとエドワードが制した。
「残念ながらこれは俺の隊長からも言われている。お前を回復部隊の仮の隊長に据えろ…と、な。」
「と、いうわけで隊長殿、指示をお願いいたします。」
 ブライアンとエドワードの言葉にクラウドが反論した。
「ったく!!一般兵をトップに据える隊など何処に有る?!」
「あっれ〜〜?!姫って一般兵だったっけ?」
「クラスAのトップを張れる男が一般兵なわけないよなぁ?」
 二人のクラスA仲間の後ろで、クラスB,クラスCソルジャー4〜5人がうなずいている。中の一人がクラウドに声をかけた。
「隊長殿、ザックスが!!」
 クラウドが振り向きざまにフルケアをザックスにかけた。
「認めたな。よし、あとはストライフ隊長殿の指揮下に入る!」
「アイ・サー!!」
 支援部隊のソルジャーたちがそう言ったので、クラウドは舌打ちしたが、すぐさま後ろを振り返って戦況を見つめた。

 外から見ていると特務隊の隊員達の強さが今更のようにわかる。
 黒いロングコートをひるがえして、セフィロスが舞い踊るように正宗を振りかざすたびに、ダイヤウェポンのボディが震える。
 クラウドがアルテマウェポンにはまっているマテリアをかざした。
「こい!バハムート・ゼロ!!」
 バングルにはめられていた赤いマテリアから銀色のボディのドラゴンが現れる。その姿に回復部隊の隊員達が見惚れていた。
 クラウドがバハムート・ゼロに命令を下した。
「ダイヤウェポンめがけてテラ・フレア照射!!」
 クラウドの命を受けて、バハムート・ゼロがその力をあらわにした。鋭い咆哮と共にはげしい光の筋がダイヤウェポンめがけて照射されると、ダイヤウェポンに組みついていた隊員達があわてて飛びのく。
「姫!そりゃないぜ!!」
「俺達を焼き殺す気か?!」
「馬鹿!俺達の事逃げられると信じていなければ姫がそんな事するか?!」
「それにしては容赦ねーーよ!」
 隊員たちがそれぞれ悪態をつきつつ地面に伏せると、無属性のビームがダイヤウェポンを貫いた。リックが物まねをしようとする前にザックスがダイヤウェポンに切りかかった。
「裏超究武神覇斬!!」
 ザックスの繰り出すバスターソードを受けると、ダイヤウェポンが崩れて行った。


 ハイタッチで勝利を喜ぶ隊員達を遠い所から眺めていると、クラウドは思わず涙が出そうになってくる。その両側からクラスA仲間のブライアンとエディが頭をわしゃわしゃとなでつけながら話しかけた。
「どーだ、姫。俺達の隊長達が特務隊に付き添いたい気持ちが解ったか?」
「うん、あの中に入っていたい。」
「俺なんて出たり入ったりで、どれだけ隊長に苛められていると思う?」
「あはははは…ごめんエディ。ブライアンもありがとう。みんなもご苦労様。」
 ブライアンの後ろに控えている回復専門の魔法部隊隊員達がクラウドの言葉と笑顔に感激していた。

 悠然と歩くセフィロスを中心に、特務隊の隊員達が引き返してきた。
 敬礼して迎えるクラウド達に、軽く返礼しいつものように整列した。回復部隊の列からちょこちょこっと走り寄ってセフィロスのとなりに立とうとしたクラウドを、リックが羽交い締めした。
「おまえは回復部隊の隊長だろ?!だったらそこは俺の位置!」
 そう言うとクラウドをブライアンとエドワードの方へ押しやり、自分が憧れの男の隣に立とうとするが、ザックスに蹴飛ばされた。
「なんちゃってソルジャーのお前が、隊長の隣に立とうなんて10年早いわ!そこはクラウドがいなければ俺の場所なの!!」
「ひでぇ…俺よりも下級ソルジャーのくせに…」
「ほぉ…リック、お前、俺様に向かってそれを言うか?いいぜいつでも抜いてみせるぜ。」
 にやりと笑うザックスに、リックが肩をすくめて場所を譲った。
 ほんの1年ほどまえまでの見慣れた並び位置に隊員達が収まっていた。
「ミッションナンバー01822574、コンプリート。諸君の協力に感謝する、総員撤収!!」
 セフィロスが凛とした態度で言い放つと、待機していた輸送トラックに乗り込もうとする姿を、すこし悲しげな瞳で見ていたクラウドが後ろの隊員達に振り返る。
「撤収しようか。」
「それ、命令じゃないよ。」
「まぁ、隊長らしくて良いと思うけどな。」
 二人のクラスAがクラウドに向かって敬礼すると、再びクラウドを挟んで両側から頭をわしゃわしゃとなでつけている。回復部隊の隊員達が3人の後ろを従うように歩きはじめるが、冬でもないのにやたら冷たい風が吹いてきたのを感じはじめた。
「おい、なんか寒くないか?」
「うわ!!足元見ろよ!霜柱だぜ!」
 見事な霜柱が出来はじめている。クラスCソルジャーの声に不思議に思って、クラスBソルジャーが前を歩く3人を見ると、クラウドの両隣の二人が氷ったように動かなくなっていた。
「副隊長殿?サー・エドワード?」
 後ろからかかった声に返事をしない仲間に不審に思い、クラウドが思わず二人をのぞき込むと、真っ青な顔をして固まっていたので、思わずセフィロスを見ると凄い形相でこちらを睨みつけていた。
 クラウドがあわててセフィロスに近寄る。
「サー・セフィロス、何か御用でしょうか?」
 クラウドが近寄った事で、いきなり機嫌が直ったセフロスのおかげで二人のクラスAソルジャーのフリーズが解けた。

「やはり、お前は私の副官が似合っているな。」
 ゆるやかな笑顔を残してセフィロスが輸送トラックに乗り込むと、クラウドも安堵の為息をひとつついて後ろを振り返った。
「ゴメン、どうやら俺…特務隊の副隊長からの移動は無さそうだ。」
 鮮やかな笑顔と共にトラックに乗り込んだクラウドを見送ると、絶対零度の怒気から開放された回復要員のソルジャー達が安堵の為息をついた。


* * *



 カンパニーに帰還するとランスロット、トリスタン、パーシヴァル、リーが、輸送トラックが到着するのを出迎えてくれていた。
 悠然と姿を現すセフィロスに軽く一礼をしてランスロット統括が話しかけた。
「ご苦労様でした。」
「ランス、一週間ほど休暇をくれないか?」
「ええ、星の厄災の一つを片づけたのです、そのぐらいの休養はできると思います。奥様の分も…ですよね?」
「当然だ。」
「了解いたしました。」
 会話を終えてセフィロスは後ろを歩いてくるクラウドを振り返った。クラウドは小首を傾げるようにセフィロスを見ていた。
「何でしょうか?隊長殿。」
「明日から一週間ほどだが、あっちの仕事は入っていたか?」
「いえ、再来週の2直の時に入っていますが、それまではありません。」
「そうか、では後で話す。」
 そう言うとセフィロスはさっさとクラスS執務室へと歩いて行った。
 後ろからブライアンとエドワードがやってきて、クラウドの肩をポンとたたいた。<
「どうしたんだよ、ぼーっとして。」
「ん?何でもないよ。ちょっと疲れたのかな?」
「疲れた?MPの使い過ぎか?ほれ、旦那、出番だ。」
「え?お、俺?」
「ああ、クラスAでのペアだろ?ほれ、お姫様抱きでもやってやれ。」
「ブライアン!貴様、俺に死ねって言ってるようなもんだぞ!」
「冗談じゃない!俺はまだ歩ける!!そんな事するから俺が”姫”だなどと女の呼称を付けられて呼ばれるんだ。」
 ぶうぶう言いながら肩を怒らせて歩くクラウドの後ろから、二人のクラスAソルジャーがニヤニヤしながら歩きはじめた。
「いやぁ、実にからかいがいのある奴だな。」
 笑顔で歩いてくる二人のクラスAを振り返ると、クラウドが反論した。
「クラスAトップの男がやることかよ。趣味が悪い。」
「あっれー?!知らなかったのか、今のクラスAトップはお前だぞ。」
「お、俺が?!ブライアンだろう!」
「俺?剣でも魔力でも戦略でも姫には勝てねえってば。大体最近じゃあ俺よりもエディのほうが魔力も剣も強いんじゃないのか ?」
「俺?剣も魔力も姫の方が上。体力とパワー以外は間違えなくお前がクラスAトップだよ。ソルジャーとして施術されるならお前はいきなりクラスSに上がると思うぜ。」
「でも…それは絶対になくなった。」
「まだ悔やむか?そのうち俺たちから魔晄の力が抜ける。そうなったら体力もパワーもお前と変わらなくなるぞ。」
 ブライアンが言った一言にクラウドが目を丸くした。
「あ…そうか。そう…なんだ。」
「そ、あとどのくらいかかるかわからないが、ソルジャーはひとりもいなくなる。」
「そういえば…どこかの隊長マニアが”そうなったら俺の天下!”とか言っていたな。」
 クラウドとブライアン、エドワードがクラスA執務室へと歩きながら交わしていた会話に、いきなりリックが加わった。
「誰のことかな〜〜、俺だよ!」
「お、リック、お疲れさん。さて、報告書が待ってるぜ。」
 3人がクラスA執務室に入ると、それぞれ自分の机に向かい報告書を書き上げる。クラウドがまとめてクラスS執務室へともって行き、隊長のセフィロスのサインをもらうと統括室へと提出する。
 一連のミッションが正式に終った。