ランスロットはセフィロスに言われた言葉に思わずとまどっていた。パーシヴァルも軽くうなずきながら同じことを言い始める。
「そうだな、ランスは結構優しいからな。」
「だからキングの代わりと我慢して、統括もこなせるんだろ?」
自分の仲間であったソルジャー達からも同意されれば、ランスロットも認めざるをえなかった。
「そうですか?気が優しいなんて初めて言われましたよ。」
ランスロットは少し照れたような笑顔で仲間たちを見ると、すぐに表情を変えた。
「でも仕事は仕事です。きちんと報告書を書いて下さいね。」
そう言うと早々に統括室へと戻って行った。
執務室に戻って報告書を書き上げるとクラウドはクラスS執務室へと向かう、セフィロスにサインをもらい統括へ提出する。時計はすでに午後7時を指していた。
クラウドが退勤すると、ほぼ同時にセフィロスも退勤する。
住み慣れたマンションへと戻ると、クラウドがあわてて冷蔵庫の中身を確認していた。そこへセフィロスが入ってきた。
「今から作るぐらいなら、外で食べないか?」
「エヘヘヘ…実は作り置きがあるんだ。ロールキャベツとガーリックトーストでいい?」
「なんだ、デートもさせてもらえないのか?」
「外に行くとそれだけ戻ってくる時間がいるもん、部屋ならずっとセフィのそばに居られる。」
頬を赤らめて照れたように上目使いで話すクラウドは凶悪なまでに可愛らしい。 <by英雄視点
セフィロスはゆるやかに微笑むとクラウドの唇に軽くキスをして、ロールキャベツを受け取りレンジに入れる。その間にクラウドはガーリックトーストを焼き上げる。質素だが愛妻の手料理に優る料理がある訳ない。
美味しい料理を食べて、いつものようにリビングでくつろいでいると、クラウドが冷えたワインをもってきた。
セフィロスがグラスを受け取ると首をかしげた。
「どうしたんだ?」
「これで強いモンスターはいなくなったんだよね?だからお祝い。」
「クックック…厄災はいなくなったがまだ強いモンスターはいるぞ。」
「でも、エメラルドやルビーほどじゃないでしょ?」
「ああ、まあな。普通に正宗で一祓いすれば倒せる。」
「うふっ…セフィって本当に強いんだね。」
ずっきゅ〜〜〜ん!! ← 英雄のハートが射貫かれた音w
「ふっ…そんな事は無い。」
緩やかに微笑みながらグラスをちょこんと重ねると、セフィロスは冷えたワインを口に含んだ。豊潤な香と味が口の中に広がる。
「強いモンスターがたくさんいるなら、まだまだバハムートさん達に強くなってもらわないといけないのかな?」
「そうだな、だが分裂するまでには退治が終るだろう。」
「そう…そうなんだ。」
クラウドがほんの少し寂しげな顔をしたので、セフィロスが抱き寄せる。
細い顎を捕らえて自分の方をむかせると、深い口づけを与えはじめた。同時に口に含んだワインを口移しで与えると、クラウドの頬がほんのりとピンク色に染まり瞳が妖艶な輝きを増す。
「んっ……うふっ……ん!」
息が継げないほど激しい口づけに翻弄されて、クラウドが喘ぐと、いきなりソファに押し倒された。腕の中で真っ赤になりながらあがく少年がセフィロスに取って何者よりも愛しい。
「何をあがく?」
「だ…だって…あん!!」
サマーセーターの裾から入ってきたセフィロスの手が、クラウドの身体をまさぐる。のけぞるクラウドの白い首元に噛みつくようなキスをすると華奢なからだが跳ねた。
「あ……ん。セフィ……ここじゃ…嫌ぁ…ん!!」
明るいリビングでは、いくら二人しかいないとはいえ、自分の全てをさらけ出したくないクラウドが、強請るようにつぶやく。セフィロスがクラウドを抱き上げるとベッドルームへと移動した。ゆっくりとキングサイズのベットにクラウドの身体を横たえると、愛しい少年の両腕が自分の首に伸ばされて、覆いかぶさるように抱き寄せられる。
「セフィ……セフィ……」
「どうしたと言うのだ?クラウド。」
「だって…いつも横で戦っていると思うんだ。ほんとうに…こんなにかっこよくて強くて…優しい人が俺のパートナーでいいんだろうかって…」
「何を馬鹿な事を言うんだ。お前だけだ…私から抱きたいと思ったのも、隣に立たせたいと思ったのもお前だけだ。」
何度も交わす口づけと、優しい愛撫にクラウドが溶かされていく。そして甘い喘ぎ声とともにセフィロスのたくましい身体に抱きしめられ、貫かれて何度も情交を交わす。
やがて啼き疲れてクラウドが意識を手放すと、いつものようにセフィロスに身体を清められて、抱きしめられ眠りにつくのであった。
翌朝、めざましの音でクラウドが目を覚ますと、すぐ隣で銀髪の恋人がゆるやかに微笑んでいた。
「あ、おはようセフィ。」
「ああ、おはよう。」
軽くキスを交わすと、クラウドは裸のままベットから抜け出し、Yシャツを羽織ると、キッチンへと歩いて行く。いつものように朝食を作っていると、セフィロスがシルクのシャツとGパツをはいてキッチンへと歩いてきた。
「おいおい、下着ぐらい着ろ。それとも朝から誘っているのか?」
「冗談!仕事にいかなきゃいけないのに誘う余裕なんて無いよ。」
「なんだ、つれない奴だな。」
「ペーペーは早く出社しないと、後で何言われるかわからないんです!」
クラウドの言葉に思わずセフィロスが苦笑する。
クラスAどころか、いつでもクラスSソルジャーとして登録されてもすぐに通用するような男のくせに、自分の実力を今だに過小評価する。
この少年にどうやって本当の実力を知らせるべきか、少し考えてしまうセフィロスだった。
食事の支度を終えて食卓に座ると急いで食事を取る。
食べ終わると食器を洗濯乾燥機にかけてすぐに着替えた。いつもの白のロングを素肌に羽織ると壁のアルテマウェポンを腰に装備する。
セフィロスが黒のロングをまとって正宗を装備すると、二人で玄関を出る。
軽いキスを交わしてエレベーターに乗り込むと、地下の駐車場からそれぞれの愛車で出勤するのが朝の日課であった。
カンパニーに出社するとそれぞれの執務室に入る。クラウドがクラスA執務室に入った途端リックに捕まった。
「ひ〜め、ジュノンの潜水艦搭乗員からの情報だけど。お前、隊長達にセクハラされたんだって?」
「え?あ…う、うん。」
「俺の所の隊長も?」
「うん、サー・パーシヴァルもサー・ガーレスもサー・リーも、リック達と一緒で戦闘終了した後、俺に抱きついてきたけど…」
「はぁ?!何考えているんだ隊長達は?!」
「リック、シメるなら協力するぜ。」
エドワードとパーシーに声をかけられてもリックはあることに気がついて動けなかった。
「まさか…隊長も?」
「た、隊長は…俺にキスしてきた。」
「ったく…それじゃ噂にもなるな。」
「クラスSトップ4がカンパニー1の美人にセクハラって?まったく頭痛いぜ。」
「今ごろ隊長達クラスSでも苛められてるんじゃないかな?」
クラスAソルジャー達が想像した通り、クラスS執務室では3人のソルジャー達が仲間たちに囲まれて責められていた。
「え?誰が姫に抱きついたって?!」
「キングとハイタッチをして喜びをわかちあったって?!」
「一緒に戦えただけでなくそんな事までして!!」
「覚悟はよろしいのでしょうな?」
仲間たちに囲まれて真っ青な顔をしているパーシヴァルが叫んだ。
「ま、まて!!命がけの仕事だったんだぞ!!」
「そのぐらいのご褒美ぐらいもらってもいいと思うが?」
「だいたいキングも一緒にいたのだぞ、キングが何も言わなかったのに、なぜお前達がいちいち突っかかってこなければいけないのだ?!」
仲間に囲まれてガーレスもリーも言い訳をする。そこに朝一番でミッションから帰ってきたトリスタンが、クラスS執務室に姿を現した。3人のソルジャーがまるで”吊し上げを食っている”状態なのを見て、きょとんとした顔をして問いかけた。
「なんだ?一体どうしたと言うのだ?」
「ああ、トリスタン。いいところで帰ってきた。こいつらはキングと姫と一緒に戦えたと言うのに、敵に勝ってキングとハイタッチをして喜んだだけでなく、姫に抱きついて”充電”しているのだぞ。」
ヴィアデの言葉を聞いていたトリスタンの顔が徐々に厳しくなり、”姫に抱きついて”のあたりから、腰にはいでいた銃を取り出し、3人のソルジャーを狙いはじめていた。
「クックック…貴様達、死にたいと見える。」
銃口がぴたりとパーシヴァルの心臓を狙っていた。
そこへ隣から聞こえてきた騒ぎに気がついたクラスAソルジャー達が、なだれ込むようにクラスS執務室に入ってきた。
「うわ!!た、隊長!!」
「何を血迷っているのですか隊長!!」
「はぁ…やっぱり。」
「姫を抱きしめるもんでこうなるんです。」
「だいたいエディがどれだけ苦労しているか、知っているのに…まったく。」
「サー・トリスタン。後は俺達特務隊におまかせ下さい、クラスS3人ぐらい責任をもってぼこぼこにシメてさしあげます。」
リックがにやりと笑った。
その不敵な笑みに3人のトップソルジャー達が顔を青くする。それまで黙って見ていたセフィロスがそんな3人に氷の微笑みを向けた。
「ほぉ…特務隊などステータス変化の魔法をかければイチコロだとか言っていたと記憶しているが、違ったか?クラウド。」
「え?ええ、間違いありません。臭い息やブライン、毒で自滅するとおっしゃっていました。」
クラウドの一言にリックの眉がピンと跳ねた。こめかみに血管が浮くほど怒りに震えている。
「クックック…面白い、やれる物ならやってもらいましょうか。これでも少しは魔防も付いてきたのですけどね。」
そう言うとポケットから携帯を取りだし自分の腹心の部下を呼び出す、即座に出た相手に名前も名乗らずに一方的に喋りはじめる。
「カイルか?姫を抱きしめたクラスS3人をシメる、協力してくれ。」
「くっくっく…3人か、お安い御用だ。」
「ジョニーとザックス、ユーリも呼んでおけ。」
「アイ・サー!」
トリスタンがリックの話を聞いていて銃口を下げた、エドワードが青い顔をしている。
「うわ〜〜俺の時より大変そうだな。」
「当たり前だ。お前は知らなくて抱きついている。連隊長達は知っていて抱きついている、最高に歓迎しなければな。」
やがて扉がノックされてザックスとカイル、ジョニー、ユーリが入ってきた。噂に敏感なジョニーは既になぜ自分が呼ばれたのか知っているようだった。
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