クラスS見習いとなったおかげで、クラスSの会議に顔を出すたびにクラウドは、いつもの席であるセフィロスの左となりに座らされては、会議を仕切らされていた。
「エディ、たまには代わってくれよ〜」
「ヤダ!!会議に付いて行くだけでこっちは必死だっていうのに、クラスSを仕切るなんて出来るわけないだろ?」
「ブライアンは?」
「無理言うな。意見を求められても、ろくな意見も言えないんだぞ。エディと一緒で聞いているだけで精一杯だ。」
「俺なんて…言葉使いから治さないと発言も出気やしねぇ上に、戦略会議なんて聞いていてもちんぷんかんぷんだぜ。」
「ザックス〜〜、特務隊の副隊長ならあの会議を仕切れるぐらいまでにならなきゃいけないんだぞ。」
 ぷんすか怒っているクラウドに、ザックスは頭をぐりぐりとなでながら笑顔で話しかける。
「本当、お前良くやってるよな。」
「その場で2個師団仕切らされたりとか…姫、凄かったもんな。」
「軍歴さえ規定を満たせば、即クラスSか。後1年後には黒のロング着て、何処かの隊の隊長になっているんだろうか?」
「ブライアン、そりゃ甘い。あの独占欲の強い旦那が愛妻をそばから手離すと思うのか?」
「ああ、そうか。そりゃ無理だ。」
「姫が黒のロングを着ることができるかもしれないが、その頃には治安部が縮小する方向に向かう気がするんだけど。」
 先ほどまで話し合っていたのは魔晄炉の封鎖とそれに伴う反抗勢力の減少、および治安部の今後のことだったのであった。ガスト博士から提出されたレポートによると、魔晄炉を閉鎖してほかの電力に変えていくにはあと2年ほどかかるという。順番に代行電力に交換していくので時間がかかるらしい。
「ああ、それは間違えなさそうだな。ゴンガガの魔晄炉も今度正式に廃止が決まったようだしな。」
「ああ、今度ミッションで封鎖に協力するという話だものな。残るはミッドガルの魔晄炉が9つ、反抗勢力の抵抗も少なくなったな。」
 クラウドはそう言うと、ザックスと共に特務隊へと出掛ける。執務室でリックと隊員達が待っていた。クラウドとザックスを認めると整列して敬礼すると、慣れているクラウドはすぐに返礼するが、ザックスが一瞬とまどった。
 隊員たちが敬礼から直って、ザックスににやにやと笑いかける。
「何やってんだよ。」
「やっぱりお前に副隊長は無理か?」
「なんとでも言えリック。クラウドのとなりから引きずり下ろされたくせに。」
「ちぇ!シメテやりたくても強くなったから難しいな。」
「3人がかりでもだめか?」
「クラスSトップ3を退けたんだからかなう訳がない。」
 素直に負けを認める隊員達にザックスが思わず目を見張る、そんな彼を横目で見てクスリと笑うと、クラウドは隊員達にミッションを告げた。
「ミッションが入っています。ゴンガガの魔晄炉廃止に伴う周辺地域のモンスターの一掃。ザックス、あそこのモンスターは強いの?」
「いや、ニブル周辺に比べると可愛いもんだが、嫌な状態変化を使う奴が居るんだよな。」
 魔防の弱いリックがすかさず青くなった。
「げ?!状態変化?!」
「ま、まさか…タッチミーとか?」
「おお、そのタッチミーだぜ。」
 ザックスの言葉に何も言えなくなった影の隊長とその腹心の部下にジョニーが苦笑をこらえきれずに話しかけた。
「リック、カイル。魔防上がったとか言っていなかったっけ?」
「そう言うお前は上がったのかよ?!」
「ガ系の魔法をかけられるようになったんだぜ、カエルパンチぐらい防御出来なくてどうするよ?!」
「うわ〜〜、姫。俺がカエルになったらキスして助けてくれ〜〜」
「リック!お前ズルいぞ!!」
「ば〜か、姫のキスで治るかよ。」
「トードを治すなら”乙女のキッス”だろうけどなぁ…クラウドは乙女じゃあないぜ。乙女って処女だろ?こいつはバージンじゃな………ぐはぁ!!」
 ザックスが言い終わる前にクラウドの回し蹴りが決まった。
「まったく、俺を女扱いして、何がバージンだよ!」
 真っ赤な顔をしながら息巻いているクラウドに、突っ込みを入れたくても恐くて入れられないリック達はひたすら苦笑を我慢をしていた。
 一方、話をもとにもどそうとクラウドは咳払いを一つしてから大きな声を出す。
「もう!とにかく静かに!!封鎖作業は第21師団に頼む事にしたから、我が隊はいつものようにゴンガガの周辺で待機しながらモンスターの一掃を担当する。」
「今回は隊長抜き?」
「いや、ミッションには同行してくれるけど、隊長もこのところなにかと忙しいから…」
「隊長ぐらいな物だものな、カンパニーと折衝しながらガスト博士の方針を守っていける人なんて。」
「だから姫が補佐なのか。」
「代行でもよかったんじゃない?」
「俺にそんな力なんて無いさ。皆が認めてくれているだけでも信じられないぐらいだもん。」
「俺達がお前を認めなければ、誰を認めろと言うんだ?」
「3匹のバハムートと13人の騎士さんたちも認めているだろ。」
「で?隊長補佐殿。出発の日時は?」
「第21師団の隊長殿と話し合ってから決めるが、あそこはミッションから帰ってきたばかりで、明日にならないとサー・ライオネルも出社されないから早くても3日後だな。それからタッチミーの事は統括にお願いしてみるよ。」
「一つだけ頼んでいいか?状態変化を防ぐからって、リボンだけは借りてくるなよ。」
「リックにリボン?おまえ角刈りだろ?何処に縛るんだよ。」
 ザックスの減らず口にリックの足蹴りが襲うが、慣れた物でひょいと避ける。それを見てクラウドが目を丸くした。
「ねぇ、ザックス。なんでリックの蹴りは避けられるのに、俺の蹴りは当たる訳?」
 クラウドが小首傾げてザックスを見ている時に、執務室の扉が開いてセフィロスが入ってきた。
 セフィロスが執務室に入って真っ先に目にした物は、可愛らしく小首を傾げてなにかおねだりするかの如くザックスを見ていた愛妻だったので、思わず正宗に手が伸びる。  < 条件反射か?!

「ザックス、貴様私の妻に何をする?!」
「うわわわわ!!止めて!よして!!殺さないで!!」
 ザックスが両腕をワタワタと振り回すのとほぼ同時に、クラウドがセフィロスをみてふわりと微笑むと、軽くせき払いをして正宗を鞘に納める。
「まったく。セフィロス、任務中は妻って言わないで!!ところで魔晄炉封鎖の話しは巧く進んでいるの?」
「既存のエネルギーを代行するほどのエネルギーはまだ無いから、それを確保しないと話しは進まないだろうな。」
「そう、でも一炉づつなら何とかなるんじゃないかな?」
「ガスト博士も同じ事を言っていた。とにかく星の命を縮めない為にはやらねばならないことはルーファウスだって承知しているが、問題は他の連中なんだ。」
「幹部ですか?」
「ああ、リーブはまだ理解があるが、パルマーやスカーレットが利権を譲らないのだよ。」
 セフィロスの言葉を聞いていたジョニーが片手をあげて口をはさんだ。
「隊長、なんでしたらM&Aのワザを駆使して大株主になって、幹部を首にするという手もありますが。」
「お前にそれができるのか?」
「資金とちょっとした時間、それと同じ思いを持つ大株主がたくさんいれば可能です。」
「さっすが経済学部卒、それで資金ってどのくらい必要なの?」
「初期費用で100万ギル、あと資産として100万ギル。まぁ何とか元を割らないうちに返せると思うけど…株は元本割れも覚悟で買わないといけないものだからな。」
 クラウドはジョニーが口に出した金額に、目が飛び出るような気がした。自分の給料の20年分なのである、クラウディアの収入を入れるとなんとか10年分ぐらいにはなるような金額をセフィロスはあっさりとした顔で受け流していた。
「なんだ、そんな物でいいのか。」
「何だって言いますけどね、俺の年収の30倍ですよ!?」
「とにかく資金は気にするな、あとはなにをすればいい?」
「今からM&A企業を起こします。そうしたら神羅カンパニーの株を安い時を見計らって少しずつ買い占めていきます。また、同じ思いを持つ株主を探して共同で株主総会の発言権を取るのです。総会で2人を幹部からおろせば、株はもう不要ですから値動きを見ながら全部売っておしまいです。」
 そう言うとジョニーは自分のパソコンで何やら作業をしてにやりと笑った。
 ザックスとリック、カイルが横から話しかけた。
「なあ、ジョニー。株価を下げるために魔晄炉廃止のことを表に流すって言うのはどうなんだ?」
「それはインサイダー取り引きに引っかかる。冗談でも流すな!」

 インサイダー取引とは、会社の経営・財務など投資判断に影響を及ぼすような未公開の重要な情報にもとづいて、役員・従業員・主要株主などある一定の立場ゆえに知るに至った者が、その情報が公表される前にその会社の発行する株式等の取引をおこなうこと。内部者取引ともいう。

 真剣な顔でジョニーがセフィロスに向かって話し続けている。
「隊長、仮に起したとはいえ一応企業です。株主総会に出る役員を考えておかねばなりません。」
「私やジョニーではダメだな。出来るのは…クラウド、お前だ。」
「え?俺ですか?」
「ああ、クラウディアならば、そのぐらいやっても何もおかしい事はない。」
「株主総会で上司を首にして来いと言う事ですか?」
「クラウディアならいいんじゃない?英雄には可愛らしい恋人でも、反抗勢力には下手なソルジャーよりも恐い存在らしいぜ。」
「そりゃ…中身は俺だもんな。でも他に考えられないから、株主総会…でるのかぁ?あのドレス姿で?げぇ〜〜!!」
 クラウドの反応に苦笑いをしながら、ジョニーは携帯を取り出して電話をかけた。
「あ、オヤジ?俺。引きずり下ろしたい幹部がいるから、悪いけどカンパニーの大株主を何人か教えてほしい。あ、ああ。スカーレットとパルマーだ。え?協力してくれる?そりゃ…うれしいけど。どうした風の吹き回しだよ?」
 どうやらジョニーは自分の父親で、グランディエ財団の会長に話しをしているようだ。グランディエ財団は神羅カンパニーの大株主の一人である、どうやらジャック・グランディエ氏もカンパニーの二人の幹部を良いとは思っていなかったらしい。
「総会の前週までに15%をめどに手に入れるつもりです。ええ、よろしくお願いします。」
 電話を切るともう一人に電話をかける。
「あ、サトルか?俺だ。株に詳しい弁護士知らない?え?まさか!俺はまだ辞めねえって。あん?!理由を言ったらインサイダーになるだろう?!こっちは200万借金してマジでやるんだぞ!おまえに入られたら借金返せねーじゃねえかよ!ああ?誰にって?隊長だよ。サンキュー、そいつなら俺も知ってる。くれぐれも探るんじゃねーぞ!200万の借金返すんだから!じゃあな!」

ジョニーが電話を切るとオンライントレードに参加すべく、新規登録企業の名前でトレードに参加登録をした。