タークス、元アバランチのリーダー、現役のトップクラスのソルジャー、そして現役の反抗勢力のリーダーが7番街のセブンスへブン一同に会していた。
「まったく…、バレット。お前がアバランチのリーダーを辞めた理由がやっと解ったぜ。こいつら見ていると戦いたくなくなるな。」
「それは命拾いしたな、ダイン。お前の目の前にいる男はその剣に4つの召喚マテリアをはめ込んでいるという噂だ。こいつの怒りにふれたらミッドガルなんて軽く消滅するぜ。」
「冗談、俺は一般人を巻き込むような事はしませんよ。それで…ダインさん。これからどうされるのですか?」
クラウドの言葉を聞いてダインが目を丸くする。まさかカンパニーのソルジャーが自分に敬語を使うとは思っても見なかったのである。
「おまえはどうして俺に敬語を使う?」
「敵では無い、年上の人ですから当然でしょ?」
「馬鹿正直な奴だな。よくそれで今まで生きてきたものだ。」
「たった17年しか生きていませんけどね。」
「そういやぁお前、ティファと同い年だったな。うわ〜〜ガキだぜガキ!!」
「そのガキ一人に毒気を抜かれている俺達って何なんだよ?!」
「よくあの銀鬼のそばにいて毒されなかった物だな。ああ、そういえばあの妖精が銀鬼を純化したのか?」
「それなら俺達はあの妖精に二重の意味で感謝せねばならんな。それにしてもあの銀鬼がねぇ…女に骨抜きにされるとは思わなかったな。」
クラウドは思わず吹き出しそうになったが、必死で我慢する。その様子が二人には苦笑を我慢しているようにしかみえなかった。
「ん?なんだ?そんなに面白いか?」
「面白いんだろうな、あこがれの英雄なんだろ?」
「ああ、憧れている。今だに書類にサインを入れてもらうのに緊張するよ。」
「まいったな、本当に。俺達はこんな奴を相手に戦っていたのか?」
「言っただろ?こいつらの本質を知ると闘う気がなくなるって。」
笑顔すらこぼれ始めているダインと、豪快に笑っているバレットに同じようなものを感じたクラウドは、にこりと笑った。
「ダインさんはもうカンパニーのやり方に反抗をしないのですね?」
「ああ、お前らがこのまま魔晄炉を封鎖しつづけるのであれば、俺達がやるべき事は土地を耕し元に戻す事だ。」
「ご協力に感謝します。」
クラウドはダインに敬礼をした。
敵であるクラウドの敬礼する姿に、ダインが目を丸くした。
「まったく…お前のような士官がカンパニーにいてよかったよ。」
そう言うとダインはカウンターに小銭を置いて、バレットに手をあげて出て行った。クラウドが溜め息をつきながらバレットに問いかける。
「彼をどれだけ信じていいのかな?」
「ぶっ!!まぁ仕方がないか。お前が俺を信じてくれるぐらいには、信じてもいいと思うぜ。」
「そう、わかった。また少し生き延びることができそうだ。」
「良く言うよ。地獄の天使が。」
「誉め言葉と取っておくよ。」
そう言うとクラウドはセブンスヘヴンを後にした。
* * *
バイクでカンパニーに戻リクラスA執務室に入る前に、クラウドはクラスSソルジャー達に捕まって、クラスS執務室に連れ込まれた。
「先程タークスから連絡が入りました。ミッドガルの反抗勢力で最大の組織が解体したそうです。まさか…姫、あなたお一人で?」
「キングのいない時に、貴方にもしもの事があったらどうされるんですか?!せっかくもうすぐ貴方が黒のロングを着る所まで来てみえるというのに!!」
最近のクラスSは過保護で仕方がないと、クラウドは常々思っていた。やはり自分がクラスSに上がるには、まだ無理が有るのだろうと理解していた。
「すみません、クラスAでの任務がありますので失礼いたします。」
そう言ってクラウドはクラスA執務室に逃げ込んだ。
扉を明けてあわてて入ってきたクラウドに、クラスA仲間がびっくりする。
「どうした?姫。」
「またクラスSに囲まれたか?」
「うん、過保護過ぎじゃないのか?そんなに俺って弱く見えるかな?」
「お前みたいな危険な男を、過保護に扱う理由があれば、俺が知りたいね。」
「でも、あれは確かに過保護だよなぁ、一端の士官に対する態度じゃないぜ。」
「やっぱ”奥様”に危険があっては…じゃないのか?」
「ランディ。殺されたい?」
クラウドがアルテマウェポンをするりと鞘から抜き取り、ランディの首元にぴたりと宛てて、冷たい微笑みを浮かべている。
「うわぁ…キングそっくり。」
「治安部にいる間そう呼んだら容赦しないからな。」
「キングに言っておけよ、一番口走ってるのは間違いなくあの人だ。」
パーシーの言う通り、クラスSもクラスA仲間も、特務隊の隊員達も、セフィロスと結婚している事実を知りつつ、クラウドを一人の士官として扱っていてくれる。そして事実を知っている者達だけの前で、愛妻がなにかされようなものなら、氷の英雄と呼ばれているセフィロスの絶対零度の怒気と共に、愛刀正宗がぴたりとその相手を狙い”私の妻に何をするか?!”と怒鳴るのである。
クラウドは思わずため息をついてしまった。
「仕事中にプライベイトは持ち込まないって言っていたんだけどなぁ…」
「思いっきり持ち込んでるじゃないか、まぁ事実を知っている関係者の前のみって事で、許してやれよ。」
「俺は許せないね。せめて任務中は俺達に守らせろってんだ!」
王女警護隊長を自称するリックの相変わらずの一言に、ブライアンが思わず噴き出した。
「相変わらず影の旦那してるねぇ、虚しくないのか?」
「ない!俺の趣味だ!生きがいだ!!」
きっぱりと言い切るリックにブライアンが呆れて見ていた。クラウドまで呆れたような顔をしてリックを見ていた。
「リックってさ、意地悪の割に俺に惚れてるって公言するんだよな。マジで惚れてるのかな〜って思う時あるよ。」
「マジだ。惚れているから意地悪しちゃうんだ。」
「それで振られ続けて1年半!」
「ふん、女と見ればナンパしまくりで、8番街の花売り娘に一目惚れした奴に言われたくないな。」
「ザックス、やっぱおまえって姫に惚れてはいなかったのか?」
「ああ、可愛い弟分としか思えなかった。」
「氷の英雄がかっさらって行った時のご感想は?」
にやにやと笑いながらキースがザックスに突っかかるように聞く。
「冗談じゃねぇ!なんであんな危険な男が、俺の可愛いクラウドを横取りして行ったんだよ〜〜…と、でも言えばよかったか?」
にっかり笑ったザックスに、クラスA一同がずっこけた。クラウドが思わず拗ねていた。
「俺の可愛い…って所だけ余分だよ。」
「だ〜〜って可愛かったんだも〜〜〜ん!!今では人妻の色気まで出ちゃって、エアリスならともかく、そこら辺の女よりも素でお前の方が可愛いぜ。」
”ぶちっ” クラウドの血管がぶち切れる音
「俺は男だ〜〜〜〜〜!!!!!!」
ゴィン!!
派手な音を立ててクラウドの回し蹴りがザックスの腹に決まる。その見事さに思わずクラスA仲間がぱらぱらと拍手をしているが、クラウドだけはプンすか怒っていた。
「ザックス!!おまえなぁ、何回言ったら俺の事女扱いするのをやめるんだ?!」
「ハラホロヒレハレ……」
つん!と横を向いた仕草すら、どうみても少女と間違われかねないと言うのに、あくまでも男でありたいと思っているようだ。クラウドのペアであるエドワードがいつもの調子で思わず頭をくちゃくちゃとなでる。
「まったく、お前って奴は…ソルジャーを一発で気絶させられると言うのに、なんでこんなに可愛いんだよ?!」
「エディ!!蹴飛ばされたい?!」
「そうやって、ぶんむくれるあたりマダマダだぜ。可愛いッて言われても”あ、そう?”にしてみろよ。」
ランディがエドワードの言葉にむっとなった。
「エドワード、そんな事教えるな面白くなくなる。」
「やっぱり…面白がっているんだ。」
「そりゃね。こんなムサイ野郎共の集団にあって、お前はオアシスみたいなもんだからな。」
「オアシス…ねぇ…」
クラウドは思わす黙り込んでしまった。彼の頭をかすめたのはもちろん愛しのダーリン(?!)。最近、部屋に帰るのも遅くいつも疲れたような溜め息をついているので、クラウドとしては何とか出来ないものかいつも考えていたのだった。
「ねぇ、ランディ。精神的な疲れってどうやって取っている?」
「ん?俺はすぐ忘れるタチだからな、ストレスも溜まらないんだ。」
「お前、何も考えていないのか?!」
「旦那の事か?最近忙しそうだもんな。」
「う…ん。どうにかしてあげたいんだけど、わからなくて。」
「お前まで暗い顔してちゃダメだぜ。あの方の特効薬はお前だ。」
「な〜んだ、クラウド。お前そんな事もわからないのか?ランディ、イメクラ衣装でこいつに似合いそうなのどこかに無いか?」
「何で俺に聞くんだよ?!」
「6番街のラブ・ワールドなんてどうだ?」
「おお〜〜!!あそこかぁ、何着せようかな〜〜」
話の流れが怪しくなって来たのを感じたクラウドが、ザックスのボディに正拳付きを思いっきり入れた。
「そんなもの、誰が着るか〜〜!!」
「そういえば、昔ルーファウスにメイド服とかコギャル服とか、嫌がらせに誕生日プレゼントされたって聞いたけど、かわいいんだろうなぁ〜〜」
「この間ナース服も着てたし、あとは…」
「男の憧れ裸エプロン!!」
「おお〜〜いいねぇ!!」
ザックスとキース、ランディが思いっきり盛り上がっているのを冷めた目でエドワードが見てつぶやいた。
「馬鹿が…」
「命が要らないようだな。」
ブライアンがつぶやき終わるか終らないかと言う時に、クラウドがランディとキース、そしてザックスに向かって剣をかざし恐い目で何かを唱えていた。
「クックック…トライン!!」
3人のソルジャーを囲むように、バリアが張り巡らされたかと思うと、いきなり雷がバリアの中で鳴り響いた。
「うわっしゃ〜〜!!」
「あぎゃあ!!」
「ひょえ〜〜〜!!」
3人のソルジャーが電撃にしびれた。
「く…くりゃうろ〜〜、それららエラリスに聞けびゃ?ハーブときゃくわしいれ〜」
「あ、そうか!サンキュー、ザックス。」
クラウドの電撃魔法を食らったザックスが、しびれた舌でエアリスの名前を出した。その言葉は意味をなしてはいなかったが十分通じていたので、携帯を取り出してエアリスに電話を入れた。
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