任務を終えていつものように愛する人と生活している部屋へと帰ると、クラウドはあわててピンク色の携帯を取りだし、マネージャーのティモシーに連絡を入れた。
「あ、ティモシー?クラウドです。クリスマスパーティーだけど、俺が主催すれば一回で終るって事ないかな?」
「え?!こちらで主催するのですか?貴方がホスト役をやるとサーがどういった行動にでるか…私としてはあまりお薦めいたしませんが…」
「でも、そんなに沢山クリスマスパーティーにでたくないもん。特に25日の夜はセフィと二人っきりで過ごしたいし…」
「あなたもサーもそれが出来る立場とは思えませんが?」
「俺、我が侭だもん。出来なくてもしたいんだもん。」
「初めてですね、クラウド君がそうやって我が侭を言ったのは。とりあえずサーと話し合って下さい。それからですね。」
「あ、うん。今夜聞いて見るよ、結果しだいではセフィを交えて、事務所で話をしないといけないよね?」
「ええ、そうなりますね。では連絡を御待ちしています。」
携帯をたたんでクラウドが溜め息をつく、その時、時計が時刻を知らせる音楽を奏でた。
「あ!!もうこんな時間?!急いで食事の支度をしなきゃ!!」
あわててエプロンを着けると冷蔵庫の食材を確認する。残った材料で出来る料理を考えると、手慣れた様子でてきぱきと支度を整えた。
やがて窓の外に星がまたたく頃、地下駐車場にセフィロスの車が止まった事をインターフォンが教えてくれる。
パタパタとテーブルセッティングをして玄関へとお迎えに行くと、チャイムを鳴らして玄関を開けるセフィロスがいた。 「おかえり、セフィ。」
「ああ、ただいまクラウド。」
いつものようについばむような口づけをクラウドからもらって、抱きしめて深い口づけを返すセフィロスが、ちょっと抵抗をしちゃった愛妻にびっくりしたように問いかけた。
「どうした?!なにかあったのか?クラウド。」
「そ、そんなんじゃないよ。鍋かけっぱなしだからちょっと心配で…」
「安心した。キスが嫌っていう訳じゃないんだな?」
「き、嫌いだよ。セフィにキスされると頭の中が真っ白になって…身体が疼いてどうにかなりそうになるもん。」
「それは最高の誉め言葉だな。」
「ば、馬鹿ァ…」
拗ねたように唇をとがらせてうらめしそうに見あげてくる青い瞳、何もかもが愛しくてセフィロスは軽く唇をあわせた
「んふっ…こういうキスなら大歓迎。」
「こらこら、今誘うな。」
「んべー!誘わないよ。だって相談したい事有るもん。」
セフィロスが脱いだ黒のコートをあずかってブラシをかけながらクラウドがつぶやく。クラウドが相談したい事があると言うこと自体珍しかったので、セフィロスはとりあえず食事をしてからゆっくりと聞く事にした。
いつものようにいい香がキッチンから香ってくる。
シルクのシャツに袖を通しながらキッチンへと足を運ぶと、ポトフとミモザサラダが並んでいた。温かい湯気がポトフの鍋から立ち上がっている。
クラウドがポトフを深めの皿によそうとセフィロスの前に置く。そして自分の前にも同じように深めの皿にポトフをよそうと椅子に座って食事を始めた。
美味しい食事となにげない会話が仕事で疲れたセフィロスの心を癒していく。
自分は良いパートナーと巡り合えたと今更ながらにクラウドの存在をありがたく思う。
やがて食事を終えると皿を簡単に片づけてから、クラウドがコーヒーを入れてリビングに居るセフィロスに持ってくる。
コーヒーを受け取りながらセフィロスがクラウドの肩を抱き寄せた。
「で?相談したい事とはなんだ?」
「あ、うん。クリスマスパーティーだけど…かなりの数クラウディアとして呼ばれているみたいなんだ。だけど、俺、回数行くぐらいなら自分が主催して、その分セフィと一緒にいたいなー…って…。」
「嬉しい事を言う。しかし、お前がパーティーの主催か、それが出来るのか?」
「だから相談しているんじゃない。ティモシーなんて俺が主催するとセフィが焼き餅を焼くと思っているらしいし。それに今ごろから広い部屋が取れるかどうかも問題だし…。」
「お前だけでなく私と共同で開けば、私はお前のそばに居られるとは思うが?」
「え?!一緒にやってくれるの?!嬉しい!!」
クラウドは思わずセフィロスに抱きついてしまった。
そんな事で抱きつかれるとは思ってもいなかったセフィロスが思わずにやけると、クラウドと一緒にどうすればよいのか考えていた。
「ねぇ、セフィ。ジョニーに味方になってもらおうよ。」
「あいつか?そう言う企画力は有る奴だからな、明日にも話をしてみるか。」
「じゃあ、それが決まってからティモシーに話せばいいね。」
「そうだな。おまえがモデルとして日ごろ世話になっている人達を招けば、私がそこに一緒に居て礼をいう事も出来るな。」
「セフィ、ありがとう。」
自分の胸にもたれ掛かるように抱きつく愛妻をひとしきり優しく抱きしめて、細い顎を捕らえて顔を上げさせると、青い瞳に妖艶な炎が見え隠れする。
ついばむようなキスから次第に深くなる口づけにクラウドの両腕がセフィロスの首を抱くように絡むと身体が密着する。 舌を絡ませるような口づけで追い上げられたクラウドから喘ぐような吐息が漏れてきた。
「あふっ………も…いや……。」
「クックック…、ならば止めるか?」
唇を離して耳元で囁くようにクラウドに尋ねると、拗ねたような瞳でセフィロスを見あげてくる。そして自分の腰を抱いたセフィロスの手を既に主張しはじめた自分の雄へと導いた。
「もう、意地悪。こんなにした責任取ってよね。」
「では、きっちりと責任を取らせてもらおうか。」
軽々とクラウドを姫抱きにしてセフィロスは寝室へと入って行った。
■ ■ ■
翌日、第13独立小隊の執務室。いつものように隊員達がそれぞれの仕事をしている時にクラウドが扉を開けて入ってきた。
ほぼ全員がその場で起立しようとするがクラウドが手で静止する。
「ジョニー、ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」
「え?俺?!なんでしょうか?」
「ああ、こっちの仕事じゃなくて副業関係。何回もクリスマスパーティーやるの嫌だからこっちで開こうかって…」
「それで、俺なわけ?」
「ああ、だって俺にもセフィにもそういった知識が無いからね。お前なら一通りは知っているから企画も立てられるだろ?」
「まぁ、子供のころから嫌ってほどあちこち引っ張り出されてたから、並みの事なら企画出来るが、それよりも今からで部屋が有るのかよ?!」
「うん。それも心配事の一つ。スタジオなんてダメだろうなぁ…」
「それはお前だけの企画なのか?」
「一応セフィとの共同企画。」
「OK!それなら俺が表立って動いても大丈夫だな。とりあえず親父を口説いて見るよ。」
そう言うとジョニーは自分の携帯を取り出して、父親であるシェフォード・ホテルグループの総帥ジャック・グランディエを呼び出した。
「あ、親父?ジョニーです。今サーから頼まれまして、サーとフィアンセのクラウディアがクリスマスにお世話になった人達を招いてパーティーを開きたいから何とかならんかって言われたんだけど…」
クラウドの後ろでリックとカイルが興味深そうに聞き耳を立てている。そこにザックスが入ってきて二人にこっそりと話しかけた。
「なあ、リック、カイル。ジョニーとクラウドと…で、何やってんの?」
「隊長と姫がクリスマスパーティーを企画しているんだってさ。」
「旦那達が?!そりゃ無理でしょ。」
「だからジョニーを参謀に引っ張り込んでいるところだ。」
「なるほど、あいつは最近ソルジャーとしてじゃなく、企業マンとして活躍している事の方が多いじゃないか。」
「仕方がなかろう?元々ジョニーは大企業を自在に操れる男だ。」
「何時引き抜かれてもいいんじゃないかな?」
「ん〜〜でも、まだしばらく返せないな。返すにはまだ強いモンスターが居る。」
「ま、それもそうだな。」
てきぱきとパソコンを操作しながら肩に挟んだ携帯で連絡を取っているジョニーは、何処からどう見ても出来るビジネスマンだった。
扉を開けて入ってきたセフィロスがジョニーの姿を見てにやりと笑った。クラウドがそんな彼に気がついて敬礼する。
「あ、隊長。ミッションですか?」
「いや、この所反抗勢力も影を潜めてしまったのか、小さないさかいは起こるが大きいのはなくなったな。」
セフィロスの言葉にザックスが振り返った。
「ん?ああ。やっぱりカンパニーが魔晄の力を使わないように努力しているのがきいているんかねぇ?それをやっとわかってくれたんだろうか?」
「そうだと、うれしいね。」
「ん?嬉しいのか?お前がクビになる日が近づいているんだぞ。」
「え?!あ、そうか。治安部縮小なら真っ先に首だよな?」
クラウドの言葉にリックが頭を抱えて叫んだ。
「あ〜〜〜!!!俺も悩む!!」
「何を悩むんだよ?」
ザックスがあきれ顔で問いかける。
「だってよぉ、憧れの君が目の前から居なくなるんだぜ。こうなったらポスターとか盗みまくって部屋中に張るぞ!」
「おう!!」
リックと同僚のカイルが大きくうなずくと、にかっと笑ってザックスが茶々を入れる。
「んで?壁にはってキスしてるとか?」
「当たり前だろ?!男と言うものは!」
リックがそこまで言うと首もとにつめたい物を感じた。セフィロスが愛刀の正宗を抜いてぴたりとリックの首に当てている。
「た、隊長?!」
「貴様!私の妻に何をする!!」
リックに向かって正宗を振りかざそうとするセフィロスにクラウドが思わずびっくりした。
正式なソルジャーではないリックがセフィロスの剣を避けられるとは思わなかったが、彼は見事に正宗の切っ先を避けまくる。
その様子を眺めながら感心した声でクラウドがつぶやいた。
「へぇ、セフィってリックが逃げられると思って正宗向けたんだ。」
不意にクラウドに声をかけられてリックがびっくりする。言われた言葉を反芻してその意味をやっと理解出来た時、リックが満面の笑みを浮かべた。
|