翌日、クラウドがカンパニーの任務を終えてから、8番街にあるクラウディアの事務所へと姿を現すと、ティモシーがいきなり泣きついた
「クラウド君、仕事にならないよ、どうにかして!!」
「は?!どうしたんですか?」
「君からパーティを主催したいといわれて2時間後にはゲストになりたいと連絡が入り出して…」
 クラウドがティモシーの指差す先を見るとミッシェルが何か分厚い本のような物をもってきていた。
「あまり電話が入るからファックスにきり変えたのよ。そうしたらファックスでも申し込みがひっきりなし。もうこんなにあるんだけど、どうする?」
「ええ?!そ、そんなに?!」
「出版社の各雑誌をはじめデザイナー、広告代理店、政界、財界、TV局なんて放送の許可を求めてるよ。」
「そんなに??クリスマスパーティーなんて何処も一緒だろうに…」
「クラウディアとサーの共催でしょ?クリスマスパーティーだと思っていないのかもしれないね。」
「え?!まさかこれって…」
「うん、そのまさか。結婚披露宴と間違えているかも。」
 スタッフ達が顔を見合わせるとクラウドは思わずため息をつきたくなった。ミッシェルから分厚いファックス用紙を受け取ると、ティモシーに話しかける。
「手伝ってくれる?業種別、契約の種類別、付き合いの深さ順に並べたいんだ。」
「もうやってあります。タグの入っている所で区切ってあるよ。」
「さすが、敏腕マネージャー。」
「お誉めの言葉、ありがとうございます。」
 ミッシェルからもらったファックスを一枚目から目を通す。最初にあったのは自分がメインモデルとして契約していた企業の会長の名前に始まり、企業の重役連の名前がずらりと並んでいた。
「一企業一人だな。こっちだって呼びたい人がいるんだ。」
「それでしたらこちらにご用意してあります。」
 ティモシーはそう言うとプリント用紙を一枚差し出した。用紙を見ると呼びたい人の名前が並んでいる。
「ティモシー、君って弁護士よりもこっちの仕事天性の才能が有るんじゃない?」
「だてに君と1年以上も付き合っていないよ。」
「こちらからもクリスマスパーティー以外の何物でもないと伝えているわ。雑誌は一出版社1カメ、TVも一局1カメで調整しろと言ってあるから。」
「記者会見はするつもりないし、聞かれても何も答えられないな。」
「雑誌はモード系のみで一雑誌1カメで呼びますか?」
「そのつもりだったんだけど…食い下がられたら、結婚披露では絶対無いって答えておいて。だいたい結婚してるし…」
「いつ公表する気なんですか?」
「俺がソルジャーをクビになったら。」
「ずいぶん先になりそうだね、了解。」
 てきぱきとゲストのランクを決めて行くティモシー達に、クラウドはある種の頼もしさを感じていた。

 ふと、ファックスの山に視線を戻すとクラウドがつぶやいた。
「この中から1,000人ぐらいしか呼べないんだね」
「ええ、サーの仕事仲間とかを考えるとおそらく500人前後。」
「ティモシー達もそこに居てもらうつもりだから、Gパンは厳禁だよ。」
「ええ〜〜!?私達も出るの?」
「俺も?!」
「当然。クリスマスパーティーって日ごろお世話になっている人達に、感謝する為に開くと思っていたもん。この仕事では皆が1番!!」
 クラウドにミッシェルが思わず抱きつく。ティモシーも思わず涙ぐんでいた所にルーファウスを伴ってセフィロスが入ってきた。

「おや?いいのかね?セフィロス。君の奥様が浮気しているよ。」
「クラウドの事を妹と思っている女性に抱きつかれているのを見ても何とも思わないな。」
「ルーファウス社長。どうされたんですか?」
「どうもこうも…ここのスタッフと一緒だ。カンパニーの大株主とかに是非お前達のパーティーにとねだられて困っている。」
 ティモシーがルーファウスのうんざりとした顔を見て思わず納得する。
「お互い様です。」
「まったく、自分が何回も出たくないからって単純に考えて…おかげでこっちがいい迷惑だよ。」
「え?なぜ?」
「君はまだわが社の所属モデルのはずだったが?」
「あ、そういえば。カンパニーからもパーティーの招待状がきていましたが…まさか同じ日に?」
「そう言う事だ。いくらソルジャー仲間のジョニーを参謀にしているとはいえ、同じ日にパーティーはないだろう?わが社と同じ日に開くならこちらも居抜きで譲ったよ。」
 クラウドが思わず吹き出した。スタッフも声を殺して笑っている。
 セフィロスが苦い顔をしてルーファウスを指さした。
「そう言う訳で煩いからつれてきた。」
「う〜〜ん、カンパニー関係者はセフィに関係のある人から順ですけど…」
「そういうだろうと思っていたよ。」
 ルーファウスがにやりと笑って椅子に座ったところに、クラスCソルジャーの証である赤い革のロングコートを着たジョニーが飛び込んできた。
「すみません、遅れました!」
「今回はジョニーがいないと始まらないから、君が基準。」
「あ、俺パシリじゃないんですか?」
「参謀だそうですよ。」
「なんだ、参謀ならパシリと一緒だ。」
 そう言って笑いを取るとジョニーはテーブルに付いて目の前のゲストのリストに目を通しはじめた。するとリストを見て次第に顔が青くなって行った。
「うわ〜〜すげーー、クリスおじさんにヘンリーおじさん、フレディおじさんまでいるや、末恐ろしい。」
「流石グランディエ財団の御曹司だね。僕には君が経済界の重鎮達をファーストネームで呼ぶ事の方が恐ろしいよ。」
 グランディエ財団を全く知らないクラウドがティモシーに首をかしげた。
「ジョニーの家って、そんなにスゴイおうちなの?」
「ええ、まあ。クラウド君はシェフォードホテルが世界中に何軒立っているか知っていますか?」
「全然、行ったことのあるのはサウスキャニオンのホテルとミッドガル8番街のホテルだけだけど…」
「シェフォード・ホテルは世界の50か国中に2000軒建っているんですよ。」
 ティモシーの話にクラウドとミッシェルがびっくりした。
「ええ?!そんな大金持ちのおうちなの?!」
「うわ!人は見かけじゃわからない!」
「お、ミッシェルいい乗りだね〜、俺と付き合わない?」
「こんな時にナンパなんてするな!」
 いつものようにセフィロスがジョニーを怒鳴りつけると、ぺろりと舌をだしてから彼の雰囲気が一転した。
 ゲストリストをクラウドに返すと本題に入る。
「で?姫はどういったクリスマスパーティーにしたいの?こんな年寄りも呼ぶならダンパは無理っしょ?」
「そうだね。いろんな人にお礼を言ったりしたいとは思う。あとはゲームとか、そうだ!借り物競争みたいな事出来ないかな?」
「紙に何か書いてそれを誰かから借りるとか仮装するとか…か?」
「このリストに乗っているような政財界の重鎮達がやってくれるかが問題だと思うな。」
「それは大丈夫だティモシー。彼らならやると思うよ、クラウディアの為ならね。」
 ルーファウスの一言にクラウドが少し考え込んでしまった。
「俺って…そんなに凄いモデルなのかな?」
「姫がにっこり笑えばどんな重鎮でも鼻の下伸ばしてやってくれるさ。」
 ジョニーの言葉にセフィロスの機嫌が下降する、ルーファウスがそれを感じて鼻で笑った。
「おい、ジョニー、着ぐるみとか用意しておけばもっと面白い物が見れるぞ。たとえば英雄殿の熊の着ぐるみ姿とか、な。」
「それは見物ですね。」
「ミニスカートのサンタガール衣装とかも?」
「おいおい、ミッシェル。どうすんだよ?!姫ならまだしもおっさんが着たら!!」
「見たくない!見たくない!!見たくない!!!」
「俺ならまだしもって何だよ?!」
「クラウド君はホスト側だから接待しなければいけないのよね。ミニスカ・サンタガール、やらせたかったなー!」
 そう言ってミッシェルが紙袋を覗き込むのをセフィロスが目ざとく見つける。さっと彼女が持っていた紙袋を取りあげた。
「下衆な格好など誰がさせるか!」
「あ〜〜、そう言って後でこっそり着せる気でしょ?!」
 ミッシェルの言葉にルーファウスとジョニーが笑い転げ、クラウドは真っ赤になり、ティモシーは頭を抱えた。
「ミッシェル。そのうちサーに斬られるよ。」
「クラウド君の彼氏は優しいから、そんな事しないわよね〜〜!!」
「え?あ、うん。セフィ優しいよ。女の人に正宗向けた事ないよ。」
 ルーファウスとジョニーが更に笑い転げている。グラッグは何がなんだかわからず、げらげら笑う二人に尋ねた。
「お二人ともなぜそんなに笑われているのですか?」
「な、何故って…アハハハハ!!!」
「ヒ〜〜!!腹痛てぇ!!ミッシェル、あんた最強だぜ!!」
「ありがと〜〜!!ダテにこの二人と1年も付き合っていないって!」
 クラウドを通してセフィロスに付き合っているせいか、それとも二人の関係を見守っていたおかげか、ミッシェルはすでにクラウドを通してセフィロスを黙らせる技を身につけたようであった。いやはや、さすが女は強かである。

 その日3時間ほど話し合ったおかげで、なんとかパーティーの形が見えてきた。
 ゲストも誰を呼ぶかなんとか決まり、カードの発送までを手配終った時、ルーファウスがクラウドに言った。
「発送は早く済ませないと、他に迷惑がかかるぞ。」
「他?どうしてですか?」
「当然他のパーティーから誘われている人達ばかりだ。わたしとてお前の奴に出たいが為自分の奴をキャンセルしたし…」
「こちらが決めないと他が決まらないと言う事ですか?」
「そうなりそうですね。このゲストリストだと…」
 ティモシーが出来上がったゲストリストを見て溜め息をついた。名だたる名士が居並ぶリストはまるで何処かの有名企業のパーティーである。ジョニーがコピーをもらってポケットに入れた。
「親父が引き付け起こすぜ、このゲスト名簿ならウチの財団のパーティーより凄い連中が集まってるよ。俺も気合い入れてやらなければいけないって事か。」
「頼りにしてるからね。」
「この貸しは高いぜ、姫。」
「夕食一回、ご招待でどう?」
「げ!!何が悲しくて姫が旦那といちゃいちゃしてるのを見ていなければいけないんだよ?!ミッシェルとデートで手を打つぜ。」
「あ、アタシ?冗談!?身分が違い過ぎる。」
「ミッシェル彼氏いないんでしょ?いいじゃない。」
「あ、俺のドレス貸そうか?」
「ジョニーはカンパニーのソルジャーの中でも出来る男だぞ、それに根は真面目な男だ。悪い話しではないぞ。」
「ティモシー!クラウド君!サーまで!!」
「ジョニーはね、身分なんて気にしない人だよ。だからカンパニーでも苗字を名乗らなかったんだ。俺を助けると思って一回だけ、ね!」
「もう、仕方がないなぁ。」
 ミッシェルがふくれっ面で渋々デートにOKすると、それぞれが事務所を後にした。