FF ニ次小説



 ルーファウスに何処が気に入られたかはわからないが、ともかく口説かれまくっているクラウドはばれやしないかと必死でセフィロスの背中にしがみついていた。
 その様子はまるですがりついているとしか感じられない。
 セフィロスがそんなクラウドにふと柔らかい笑みを送ると、ルーファウスに向かって言い放った。

「この子は渡さない。」
「な、なんだって?!セフィロス、おまえ彼女のなんなんだ?!」
「そんな事、貴様に言う必要はない。」

 ルーファウスが怒りで顔を真っ赤にしている、ツォンがそんな若社長をいさめた。

「若、どうやら彼女はセフィロスの新しい恋人のようです。貴方は他人の恋人をお金で買うようなことをされるのですか?」
「な?!ツォン、いつ私が他人の恋人を金で買ったと言うのだ?!」
「おや?先程譲ってくれれば金はいくらでも出すとおっしゃってみえましたよね?」
「うぐっ!!」

 ルーファウスが何も言えなくなって更に顔を赤くする。
 金髪碧眼の美少女を片手に抱いたままセフィロスがルーファウスをにらみつけていた。
 ルーファウスが荒々しく玄関を開けて飛び出して行く、ツォンがきっちりと一礼してからルーファスを追いかけた。
 とたんにクラウドからため息がこぼれた。

「ふぅ…もうやだぁ…」
「泣きつくのはかまわんが、キッチンでフライパンからこげ臭い香りがしてきたが?」
「え?あ!!きゃあ!!ハンバーグ!!」

 セフィロスに言われてフライパンを見に行くと、見事にハンバーグが黒くこげていた。

「うわ〜〜〜、最悪。」
「これは見事な胃薬だな。」
「ご、ごめんなさい。」

 あわてて捨てようとするがセフィロスの手がそれを止めた、クラウドが不思議そうな顔でセフィロスを見上げる。

「新しいのを作れるんだけど。」
「そうか、ならばその胃薬は山猿の餌にでもするか。」
「山…ザックスの事ですか?」
「ああ、あいつならお前のような美人が作った料理なら、どんな物でも平気で食うだろうな。」

 美人と言う言葉にちょっと”カチン”と来たクラウドが、自分よりも20cm以上も背の高いセフィロスに食ってかかる

「び、美人って何だよ〜〜!!」

 しかし一歩踏み出した時に履きなれないスリッパが脱げてしまい、思わず転びそうになり目の前のセフィロスにすがりつく。
 いきなりすがりつかれてバランスを崩し、セフィロスがクラウドの上から覆いかぶさるような形で床に倒れた。

 ちょうどその時玄関から陽気な男の声がした。

「セッフィローース、いるんだろ?入るぜ。」

 玄関を開けてザックスが見たものは、つい先程一目惚れをした可愛い子ちゃんを押し倒そうとしている(?!)セフィロスだった。

「あ…え? もしかして 思いっきりお邪魔虫だったりする??」

 真っ赤な顔をしてこちらを向く美少女と、冷たい瞳を自分に向ける上官にザックスは思いっきりフリーズしている。

「そう思うのならさっさと消えろ!!」

 セフィロスに怒鳴られてザックスは回れ右をして駆けだした、顔を戻すと目の前には顔を真っ赤にして瞳をうるませた。
 飛びっきりの美少女…いや、美少年が腕の中で困ったような顔をしている。

「あ…あの、セフィロス。そろそろこの状況を脱したいのですけど。」
「あ、ああ、すまないな。」

 立ち上がったセフィロスがすかさずクラウドに手を差し出す。その手をおずおずと握り締めてクラウドも立ち上がると気を取り直してキッチンに再び立ちハンバーグをもう一度焼き上げていた。
 チャイムが鳴って再びザックスがやってきた。

「もういいか〜〜い?!」

(あのなぁ…かくれんぼか何かしている訳じゃないんだけど。)

 クラウドが呆れてもう一枚皿を用意していると、ザックスがドカドカと部屋に入り込んできた。

「セフィロス〜〜、いつこんな可愛い子ちゃんとしりあいになったんよ?あんたの恋人だって知らなかったら口説いているぜ。」
「お前には関係ないだろ。」
「い〜〜や、関係有る!!俺だってこんな美人とお友達になりたいもん。」

 クラウドはおもわずフライパンを握り締めていた、ザックスはいきなり振り返ってキッチンに立つ美少女に声をかける。

「ね〜、彼女。名前ぐらい教えてよ〜〜」
「え?あ、あの…ミ、ミルフィーユと申します。」
「ん〜〜?君、誰かに似てるんだけど。」
「え?そうですか?私、一人っ子なのですけど。」

 ザックスがクラウドに近寄って顔をじろじろと眺めている。クラウドは困ってしまい思わずセフィロスの背中に隠れた。
 セフィロスが背中のクラウドに話しかけた。
「ミルフィーユ、またフライパンを火にかけっぱなしではないのか?」
「え?!あ…もう、いやだぁ〜〜!!」

 可愛らしい悲鳴はザックスのハートを思いっきり射貫いて余りあった。
 なんとかこげる前にハンバーグを取り出せてクラウドがほっと息をはく、ザックスの目の前に真っ黒にこげたハンバーグが置いてあった。

「あちゃ〜〜、何があってこんなに焦げてんの?」
「先程ルーファウスが部屋にやってきてひと騒動したせいだ、捨てようとしたがお前が来ると思って残しておいた。」
「ひ、ひでぇ…俺、消し炭ハンバーグですかい?」
「ミルフィーユの手料理を別けてやろうというのだ感謝するんだな。」

綺麗に盛りつけられた皿の上のハンバーグにデミグラソースをかけて、ガーリックトーストを添えるとクラウドがやっと微笑んだ。

「できました、遅くなってごめんなさい。」

 何か言おうとしたセフィロスを押しのけて、ザックスが笑顔満面で答える。

「遅くない、遅くない!!」
「貴様、食べたらさっさと出て行くんだな。」
「う〜〜ん、イケズぅ〜〜。優しいくせにつれない御方。」

 ザックスが”しな”を作りセフィロスにもたれかかる。神羅の英雄と呼ばれているセフィロスにこんな事出来るのはカンパニーの社員多しといえどザックスだけである。
 クラウドが目を丸くしてその様子を見ていた、ザックスが目の前の美少女に問いかける。

「な〜〜、こんな危険な男の何処がいいの?」

(こ、答えられるわけないだろ〜〜〜!!!)

 クラウドが白い目でザックスをにらみつけていると、諦めたように肩をすくめる。

「な〜、セフィロス。こんな可愛い子と何処で知り会ったのよ?」
「教える義理など無い。」
「でもよぉ、いいのか〜〜親が心配してるんじゃない?だってどう見たって未成年、へたすりゃ14、5でしょ?青少年保護法違反になるよ〜〜〜」
「保護者の許可はもらってある。貴様が心配する事など何も無い!」
「ちぇ!あんたがロリコンだったとは知らなかっ…」

 ザックスが何かを言いかけた時ばこっ!!という派手な音を立ててセフィロスが目の前の頭を殴った。

「ひ〜〜ん、俺死んじゃうかも。」
「貴様がこの程度で死ぬモノか。脳内筋肉が少しはゆるんでちょうどよくなるはずだ。」

 クラウドは二人のソルジャーのやりとりを羨ましげに見つめていた。
 自分が憧れていた英雄セフィロス付の秘書官になったとはいえ、クラウドに取って彼はまだ遠い存在であり堅苦しい事が嫌いなザックスのおかげで「サー(ソルジャーの称号)」と呼ぶのを半ば強制的に禁止させられていた。
 しかし、ここまでなれなれしい口など聞けるわけがない。
 クラウドが少し寂しそうな瞳をしていたのであろうか?、ザックスが心配そうな顔をする。

「ん?どうしたの?そんな暗い顔しちゃって?もしかして俺がいるからセフィロスに甘えられないとか??」
「な…!?」

 ザックスの発言に思わず怒鳴りつけたくなったが、必死になって我慢をする。その仕草はまるで震えているようでもあった。

「クックック…ザックス、貴様の脳味噌は女の事になるとやたら回転が早いと見えるな。」
「ひっで〜〜言い方。まあ、間違っちゃいないけど、だ〜〜ってこ〜〜んな可愛い子ちゃんを超絶俺様男に独占させたくないもんな。」

(まったく、ザックスの目は節穴かよ?!俺だって全然わかっていないみたいじゃないか?!)

 クラウドは不機嫌このうえない様子でザックスをにらみつけていた。
 その様子がまたセフィロスに甘えたいのを我慢しているようにしかみえないのでザックスが諦めに似た溜め息をついた。

「はぁ〜〜ダメか、こりゃ」

 目の前の可愛い子ちゃんはさっきからセフィロスにすがりついているだけで、自分には目もくれない。

「それで、お前は何しに来たんだ?」
「え?あ?そりゃ…この可愛い子ちゃんを口説きに…」

 ザックスは再び頭にセフィロスの拳骨をくらった。

「ひ〜〜ん。セフィロスの馬鹿力!!頭がへこむ!!」
「貴様の頭が空っぽだからへこむのだ!!」
「俺が報告書かけねえのはぜ〜〜ったいあんたに殴られているからだぞ!」
「ほぉ…では頭を撫でれば書けるとでも言うのか?ならばなでてやろう、思いっきりな!!」

 セフィロスの手がザックスの頭をがっしりとつかむと、わしゃわしゃと揺すっているとしか見えなかったのでク、ラウドが思わず笑った。

「ク…クククク…」

 必死になって笑いをこらえようとする様は花のように愛らしかった。 byザックス視点

「は〜〜ん、やっぱ笑った顔メッチャ可愛いぜ!」

 にっかりと笑ってクラウドにずずいと迫ってくる、再び美少女がセフィロスの影にかくれるとザックスが溜め息をついた。

「なんで〜〜、俺セフィロスより絶対女の子を大事にするけどなぁ。」
「自分でそう言う事を言う奴ほど危険だ。」
「女をとっかえひっかえのあんたに言われたくないね。」
「向こうが勝手に寄ってくるだけだ、だから適当にあしらってやってるんだ。」
「そりゃまあ一応世間的には英雄だなんて言われちゃったりするからね。」
「貴様のように考えもせずに突っ込んでいくような馬鹿には付かない呼称だ。」
「ひ〜〜ん、この英雄さんこんなに口が悪いのよォ〜〜ミルフィーユちゃんはこんな危険な男の何処が気に入っている訳よ?」

いきなり話しを振られてクラウドはとまどった。