FF ニ次小説

 クラウドが書類整理をしているとザックスがやってきて覗き込む。

「ええ?!もうそんなに終ってんの?!」
「まだこんなに残ってるの!!少しは自分でやれよ!!」
「でへへへへへ…クラウド、友達だろ?!」
「クラス1stのソルジャーを友達に持つ訓練生なんて何処にも居ません!」

 ザックスとクラウドのやりとりを聞きながら、セフィロスが自分のパソコンで何やら作業をしていた。

「ザックス、ミッションに行くぞ。ランクAミッションだ、クラス1st、2ndを数人と3rdを数十人集める。」
「うわ、かなり難度高いんだな。一般兵はつれて行くのか?」
「そうだな、下手な一般兵よりもクラウドの方が使えそうなんだが…」
「え?!自分ですか?!」
「どんなミッションよ?」
「5番街の反抗勢力を一掃する。」

 5番街と聞いてクラウドとザックスが青い顔をする。
 以前カンパニーの一般開放で使う為に、セフィロスが買った女装道具一式を売り払って、二人でもうかったお金を二分した事があるのだった。
 必死になってそ知らぬふりをして装備を確認するザックスと、いつものように5番街のいろいろなデーターを収集しはじめたクラウドにセフィロスがいぶかしげに見ていた。

 2時間後、ミッションの説明を受ける為にソルジャー達がミッションルームに集まっていた。
 必要書類をソルジャーに配るクラウドは、いつもなら配り終わると退出するが、1番隅っこの椅子に座るのをソルジャー達はびっくりしたような顔をして見ていた。

「司令、ストライフ訓練生が残っているようですが。」
「ああ、今回クラウドにもミッションを手伝ってもらう事になった、訓練生の命は全員で守ること、良いな?」
「アイ・サー!」

 上官の命令は絶対だからか、ランクAミッションと言う難しいミッションでも、訓練生が参加する事に誰も文句一つ言わなかった。
 セフィロスがミッションの内容を説明する。

「ミッション33162958 5番街の反抗勢力の制圧をする。ミッションランクはAだ、かなり難しいから覚悟しろ。」

 ミッションの内容は5番街に巣食う反抗勢力をあぶり出し、一掃すると言う物であった。
 クラウドはどうしてそこに自分が参加せねばならないのか不思議だった。
 一人のソルジャーがクラウドを指差して司令官であるセフィロスに尋ねた。

「司令、内容を考えますとストライフ訓練生は「蜂蜜の館」か「コルネオの屋敷」の潜入対策ですか?」
「その通りだ。」
「了解いたしました。」

 クラウドのとなりでザックスが笑いを噛み殺していた。
 ザックスは「蜂蜜の館」や「コルネオの屋敷」がどう言う所か知っていて、そこに潜入する為にはどうすればいいか既に理解していた。

「なるほどねぇ、たしかに下手な一般兵よりもクラウドの方が使えるわ。」

 クラウドは青い瞳をくりっとさせて小首を傾げていた、他のソルジャー達もなぜか全員納得しているのがクラウドには納得が行かない。
 会議が終了するとセフィロスの元に駆け寄って自分の感じている疑問をぶつけた。

「あ…あの、サー・セフィロス。一体自分は何をすればよろしいのですか?」
「そうだな、とりあえずコレをキャハハの所に持っていって中にある物すべて借り出せるようにして来い。」
「ギャハハって…兵器開発部門統括ですか?」
「そうだ、ミッションに必要なので出発までに借りてこい。」
「アイ・サー!」

 敬礼と共に書類をもって、クラウドは兵器開発部門統括のスカーレットのところへ出掛ける。扉をノックすると中からスカーレットの声が聞こえた。

「だぁれ?あら、あの時の可愛い子ちゃんじゃない。何しに来たの?」
「サー・セフィロスに頼まれてこちらの書類をお持ちしました。」
「え?!あんた、セフィロスのなんなのよ?!」
「あ…あの自分はサー・セフィロス付の秘書官です。」
「へぇ〜〜、あんたみたいなガキンチョをあのセフィロスがねぇ…まぁいいわ。書類を見せなさい。」

 そう言ってクラウドから書類を取り上げて中身を見て声をあげる。

「キャハハハハハ…あんたこのミッションにこき使われるのね?!いいわ、すぐ用意するからちょっと待っていなさい。」

 そう言うと壁際にある武器庫から女物の拳銃とガンベルトとスラッシュナイフ、そして一度は見たことのある香水の箱を持ってきた。

「その書類に書いてあった物全部よ。頑張ってねお嬢ちゃん。」

 そう言うとクラウドの目の前で扉をバタンと閉める、クラウドはスカーレットの言葉に目を丸くしていた。

「あの女、まだ勘違いしているや。」

 自分の女顔を棚に置いてスカーレットの化粧の濃さと香水のキツさをグチりながらセフィロスの執務室に戻った。
 執務室の中には主であるセフィロスと副官のザックス以外に一人の女性が立っていた、総務部のミリィであった。

「あ、この子よこの子!ゴメンね君あの時つかみ掛かっちゃって。」
「あ、いえ。で?書類に何か不備でもありましたか?」
「ううん、不備じゃないの。実はさっきザックスに呼ばれてきたんだけど…うん、君ならイケルよ。ナンバー1も夢じゃない!」

 ミリィに言われた事が全くわからないクラウドはきょとんとした顔をしていた。
 クラウドがスカーレットから借りた装備をセフィロスに手渡そうとすると、セフィロスがその場に置いた。

「じゃあ、頼める?」
「ええ、任せておいて!!カンパニー1のアイドルにしちゃうから!!」

 そう言うとクラウドの腕ををガシッとつかまえて引きずるように隣りの部屋に入って行く。

「え?え?何ですか?!」
「黙っていないとお姉さん苛めちゃうわよ〜〜」

 手を動かしながらもにっこりと悪魔の笑みを浮かべるミリィにクラウドがたじろぐと、いきなり制服に手をかけられて上着をはぎ取られた。

「うわ!!何するんですか?!」
「何するって、上官命令なんでしょ?5番街潜入。」
「え?ええ。」
「そのための衣装よ。早く着る!!」

 ミリィの手に持っているのはどう見ても女物、かなりひらひらとフレアやレースのある艶やかなワンピースドレスだった。

「えっ〜〜〜〜?!」

 ミリィがうきうきでクラウドにワンピースを着せるとブロンドのカツラをかぶせる。
 七つ道具と呼ばれる化粧道具を取り出して鼻歌交じりでクラウドに化粧を施すとミリィがその出来栄えに思わず息を呑む。

「し、信じられない。いくら君が女顔だって言っても…モデル並みの美少女なんてありえない。」

 目の前に座っているのは飛びっきりの美少女だった。
 ザックスが扉を明けて様子をのぞくと思わず息を呑む。

 クラウドが椅子から立ち上がると思いっきりザックスを蹴り飛ばしてから扉を開けて部屋から出てきた。
 セフィロスが一瞬クラウドを見るとにやりと笑った。

「上出来だ。そのガンベルトを装着しろ。」

 クラウドがスカーレットにもらって来たガンベルトを持ち上げると腰に装着するにはかなり短かった。

「あ、あの。まさかと思うんですけど…これって腕に装着じゃないですよね?」
「それでは銃刀法違反になるな。何処だと思う?」

 知っていてワザとクラウドに答えさせようとしているのがみえみえだ。
 うらめしそうな瞳でセフィロスを睨んでからため息交じりに椅子に座ると、スカートの裾を少し持ち上げて太ももにガンベルトを締めた。

「まさか、すぐに出動ですか?」
「ああ。ザックス、いつまでボケーッと男に見とれている?!」
「え?あ、だってめっちゃんこ可愛いじゃんかよ。このままクラウドをつれ回す気?」
「そうだが?」
「セフィロス、明日には間違えなく噂の的だぜ。」

 セフィロスが黙って正宗を取り出すとザックスがあわてて両手を振り回す。

「わ〜〜〜!!!やめて!よして!殺さないで!!」
「クラウド、集合時間だ。馬鹿は捨てて行くぞ。」
「アイ・サー!」

 ワンピースの美少女が凛とした態度で敬礼すると思わずザックスが止めに入る。

「クラウド。頼むから可愛い子ちゃんが敬礼なんてしちゃいけないって。」

 クラウドが再びザックスにひざ蹴りを入れるときびすを返してセフィロスを追いかけた。
 エレベーターで待っていたセフィロスがクラウドをのせ、ひざ蹴りから立ち直ってふたりを追いかけてエレベーターに乗ろうとした所、ザックスの目の前でにやりと笑うと扉を閉めるボタンを押しながらわざと目の前の男に話しかけた。

「遅刻は減給だったな。まぁ頑張れよ。」

 目の前で扉を閉められてザックスが惚けた。
 専用エレベーターなので一緒に乗れなかったらセフィロス達が降りるのを待って、再びこのエレベーターを呼ばなければいけない。
 しかしそれでは集合時間に間に合わない。

「セ、セフィロスの馬鹿野郎〜〜〜〜!!!」

 ザックスは一人悪態をついて非常階段へと駆けだして行った。

 一方、先に1Fに到着したクラウドは人の行き来する中を横切ろうとして、なれない靴に転びそうになったところをすかさずセフィロスに助けられる。

 フロアに居る女性から金切り声が聞こえる中を悠然とセフィロスがクラウドを抱えてフロアを横切って行った。

 階段を7F駆けおりて60Fまで降りた所で一般のエレベーターで一歩遅れてフロアに出たザックスは、扉が開いた途端に聞こえた女の子の金切り声にびっくりする。
 悲鳴を上げていた女の子がザックスに気がつき駆け寄ってきた。

「あ、ザックス。今、サー・セフィロスが凄い美少女をつれてーーー!!」
「あ?ああ、知ってる。」
「知ってる?あの子を知ってるの?どう言う子?!」
「え?同じ部屋に居る…」

 ザックスがそこまで言うと目の前の女の子が悲鳴を上げる。

「ええ?!同棲してるの?!」
「は?あ、後で話すよ。ミッションの集合時間なんだ!!」

 ザックスがあわてて去って行くとフロアに居た女の子が怒号のような悲鳴を上げていた。