FF ニ次小説

 ミッションの集合場所で召集がかかっていたソルジャー達が待っていると、セフィロスが金髪碧眼の飛びっきりの美少女を抱えて入ってきた。
 その直ぐ後にザックスが続いて入ってきた。
 居並ぶソルジャー達が全員セフィロスの抱えている美少女を見つめている。

「あ、あの。セフィロス司令。その少女は?」
「少女?ああ、クラウドか。潜入のための女装だ。」
「え?ク、クラウド?!」
「あ、はい。お願いですから止めさせて下さい。」
「あ〜、それは無理。お前が居ないと潜入出来ない場所がある。」
「全員揃ったか?!では行くぞ!!」

 セフィロスの号令と共に集まった兵士達がトラックに乗り込むと一路5番街を目指してトラックが走り出した。
 トラックの中でクラウドはソルジャー達にちやほやとされていた。

「クラウド、わからない事があったらなんでも聞けよ。」
「5番街の潜入は恐いかもしれないけど俺達が付いているからな。」
「あ、はい。ありがとうございます。」

 どうみてもクラウドが訓練生で守らなければいけないという事ではなく、十二分に邪な気持ちが含まれているのがミエミエである。
 ザックスが呆れてソルジャー達を睨みつけていた。

「おい、そいつは旦那のお気に入りなんだから変な道に迷い込ませるんじゃねぇぞ!!」
「い、嫌だなぁザックス。そんな事わかってるって。」
 その時、前方から運転手が声をかけてきた。
「まもなく5番街の目的地に到着します。」
「各員装備の確認後目的の施設に行けクラウドはルークと共に行動せよ。」
「あ、あの。具体的に自分は何をすればよいのでしょうか?」
「下手に知っているよりは知らない方がマシの事もある。ルーク、くれぐれも目を離すなよ。」
「アイ・サー!」

 ソルジャー達が目的の場所へと別れていった。
 クラウドはルークと一緒に蜜蜂の館へと歩いていく。
 蜜蜂の館の入り口で黒い服を着た男にクラウドは、上からしたまでじろじろとまるで値踏みされるように見られた。
 ルークが男に話しかけた。
「可愛いだろ?」
「ああ、いいな。すぐにでもナンバー1になれるぞ。」
「あ、あの。ルーク、一体なんの事?」
「え?だってこの店に入りたいんだろ?」
「え?ええ、そうだけど。」
「と、言うこと。」
「お前、名前は?」
「え?ク、クラウド。」
「クラウド?男みたいな名前だな。」
「お、俺は男だけど?」
「え?お、男?うう〜〜ん、まぁ男でもこれだけ可愛かったらいいか…よし、入れ!」

 あまりよくわからないがとりあえず中に入らせてもらえるらしい、ルークがカバンをもってクラウドに一緒に付いてくるが黒服に注意されている。

「おまえはそのカバンを置いたらさっさと帰るんだぞ。」
「ええ、そりゃもう。はい。」

 ルークも黒服にへこへことおじぎをしながら気の弱そうな男を演じている。
 楽屋のような部屋に通されてルークがカバンから何かを落した、それがころころと転がってどこかへ隠れてしまった。

「ああ!!俺の車の鍵〜〜!!!」

 ルークがあわてて床にへばりつくようにあちこち探す。
 その隙にクラウドが扉を開けてどこかへ出て行ってしまった。

「ああ!!逃げるな!!」

 クラウドは蜂蜜の館中を逃げ回る、これはあらかじめ司令のセフィロスにやるべき仕事として教えられていたのだったが、逃げ回るうちに蜂蜜の館が娼館であることがやっとわかってきた。

(お、俺が女装をしたのって、そう言う事だったのか?!)

 今さらのようにセフィロスに対して怒りのような物がわき上がってきた。
 クラウドが必死に逃げ回っているうちに、ルークが無線で仲間を呼んだのか3人ぐらいのソルジャーがなだれ込んできた。
 その騒動の中クラウドは最初からの約束通りこっそりと「蜂蜜の館」を抜け出した。
 一息ついて次にやるべき事を思い出す。

「たしか次はコルネオの屋敷の潜入だったけ。サー・ルークを待つとまた変な話しになりそうだな。」

 そう思いながらルークとの待ち合わせ場所である公園に一人たたずんでいると、後ろから一人の男が声をかけてきた。

「君、一人?」
「え?ちょっと…人を待っています。」
「君みたいな可愛い子を待たせるなんて嫌な奴置いていかない?もっといい人紹介してあげるよ。」

 男がそう言うと嫌がるクラウドを無理やりチョコボの馬車(?)に乗せた、馬車の後ろは鉄格子になっているのでルークが走ってくるのが見える。

「まずい!!クラウドが捕まった!!」

 あわてて司令のセフィロスに無線で連絡を入れる、チョコボの馬車で連れられて行った事を告げると馬車の後を追いかけた。

 一方、クラウドがチョコボの馬車に乗せられて連れ去られたのを聞いたセフィロスは正宗を片手に駆けだしていた。
 その馬車の行き先である建物を目指す。
 5番街のウォールマーケットで一番大きな屋敷の前にやってきたセフィロスは、その一風変わった装飾と変な宛て字の看板に思わず頭を抱えた。

「古留根尾。フン!何処かの馬鹿な学生でもあるまいし…」

 セフィロスが吐き捨てるように一言つぶやくと、正面に居る黒服を睨みつけていた。


* * *



 一方チョコボの馬車で連れ去られて行ってしまったクラウド君。、へんてこな装飾の大きな屋敷のロビーで他の女の子2人と待たされていた。
 隣りに立っている二人の女の子はちょっと大人のお姉さん達。
 どうしていいのかわからないクラウドはおろおろするばかりで、そのお姉さん達に励まされていた。
 黒服に呼ばれて一つの部屋に3人で入ると小太りな男が出てきた。

(あ…れ?この男たしか…)

 以前どこかであったような気がするが、クラウドは何処であったのか全く覚えていない。
 小太りの男が3人の女性(?)を前に涎を垂らさんがばかりに喜んでいた。

「よ〜し娘ども! ドン・コルネオの前に整列するのだぁ!」

 コルネオは机に乗り出し喜んでいた。

「ほひ〜! いいの〜、いいの〜!どのおなごにしようかな? ほひ〜ほひ〜この娘にしようかな〜? それともこの娘かな〜?」

 コルネオはクラウドの顔を眺め込むが、クラウドはさすがに視線をそらす。

「ほひ〜!! 決めた決〜めた!! 今夜の相手は……この華奢で可愛らしいおなごだ!」

 何と、二人の色っぽい女性がいるにもかかわらず選ばれたのはクラウドだった。

「ちょ、ちょ、ちょっと待て! いや、待って下さい!」
「ほひ〜! その拒む仕草がういの〜、うぶいの〜  後はお前達にやる!」
「ヘイ!! いただきやっす!」
「さ〜て、行こうかの〜!」

 クラウドは二人のお姉さん達の顔を見て助けを求めるが彼女らはただ「行くしかない」と頷くばかり。
 仕方がなさそうに頭を垂れ、そしてコルネオの後を追うのであった……

 連れてこられたのは奥にあるコルネオの寝室であった。
 悪趣味な飾りがベッドの周りに滞りなく置かれ何故か「興奮剤」までもが用意されている始末……

「ほひ〜、やっとふたりきり……さあ子猫ちゃん…… 僕の胸へカモ〜ン! ほひ〜、何度見てもカワイイの〜お…… お前も、俺の事好きか?」

 クラウドは思わず首を横に振った。
 それを見てコルネオが問いかけた。

「ほひ?俺が嫌いなの?まさか、ほ、他に好きな人でも?」

 クラウドは首をコクコクと縦に振った。

(ティファ…)

 クラウドの頭を過ったのは村で唯一自分に優しくしてくれた少女だった。
 コルネオが更に問いかけてきた。

「どういう奴だ?!」
「えっと…髪が長くて、皆から人気が有って…強くて…」

ティファ。君はいつも村の子供に囲まれて、明るく笑っていたよな。
たしか…誰だったか忘れたけど、拳法もならっていたし…


 クラウドがそこまで言うと後ろの扉が真っ二つに切れた。扉を蹴り倒して現れたのは白銀のソルジャー・セフィロスだった。

「げげ!!セフィロス!!」
「その子を返してもらう。」

 そういうとセフィロスはひらりと飛び上がりクラウドを左手に抱えると、ぴたりと正宗をコルネオに向けて首に触れるか触れないかのところで止める。

「ヒ…ヒィ 返す!!返すから命ばかりはお助けを〜〜!!」

 コルネオはそう言ってベットの上に縮こまっている。
 セフィロスが嘲るような視線をコルネオに送ると、きびすを返すように床に降りて歩き出そうとした時、伏せていた男がいきなり起きて手近に有る紐を引っ張った。

「わ〜はっはっはっは…こういう事もあろうかと…あれ?」

 予定ではセフィロスの足元の床が割れて、落とし穴が現れ、目の前の男と小猫ちゃんは下水路に落ちるはずだった。
 しかし床は割れるどころかびくともしていなかった。

「何の真似かは知らんが、それほどまでに命が要らないらしいな。」

 セフィロスがそう言うと手のひらをコルネオに向けて何か唱え出した。

「ブリザガ!!」

 セフィロスが氷の最高位魔法をかける直前にコルネオがもう一度ヒモを引っ張っていた。
 なぜか今度は巧く穴が開き氷の刃がコルネオを襲う寸前にコルネオは穴の中に飛び込んで生き長らえた。

「そ、そういえば思い出した。あの可愛い子ちゃんは以前パーティーで出合った小猫ちゃん。うひゃ!!俺は2度もセフィロスの恋人を…」

 コルネオはその事実に真っ青になった。
 この時以来コルネオは華奢で可愛らしい女の子を選ばなくなった…と、言うまことしやかな噂が立った。