FF ニ次小説
 一日かけてコンドルフォートの南西にある草原へと移動した。
 クラウドとルーク、そしてザックスは先日買った衣装を身につけてチョコボの足跡を探していた。
 ルークとクラウドは本当に兄妹のようでザックスから見ても少年兵は何処からどう見ても可愛い女の子にしかみえなかった。

「ピンクのギンガムチェックっていいねー!」
「うるさい!!さっさとチョコボを見つけないとダメだろ?!」

 クラウドが叫んでいると後ろでルークが呆れたような声を出した。

「なぁ、ザックス。本当にチョコボ寄せのマテリア無くてもチョコボが寄ってくるんだな。」
「ん?ああ、来たか。」
「ああ、目の色を変えて突っ走ってくる奴がいるぞ。」
「え?!ま、まさか!?」

 草原のはるか向こうから”ドドドドドドドド”という足音が聞こえてきた。
 クラウドがザックスの後ろに隠れるとルークがポケットから、ギザールの野菜を採り出した。
 チョコボが凄い勢いで走ってくるのが見えると、そのチョコボは本当に目の色を変えているようにみえた。
クラウドが青い顔をする。
「ま、まさかあいつ…あの時の奴じゃないよね?」
「あん?お前にプロポーズしたチョコボか?さあな、チョコボなんて皆同じにしか見えないんだけどな。」

 しかしそのチョコボは一直線にこちらに向かって走ってきた。
 ザックスが背中のクラウドががくがく震えているのを感じていた。

(はは〜ん、こいつ以前チョコボに連れ去られた事あるからなぁ。)

 などと悠長に構えていた所にチョコボがまっすぐに突進してきた。
 チョコボに蹴飛ばされてザックスがぶっ飛ぶとその反動でクラウドがしりもちをついた。
 その瞬間、クラウドをちょいと咥えてチョコボが走り去ろうとした。
 ルークがあわててストップの魔法を発動させると、チョコボの足がぴたりと止まった。

 チョコボの背中からクラウドを降ろすと時間が止まって固まっているチョコボに、今度はヘイストの魔法を掛けてやった。
 クラウドを奪われたと思っていないチョコボは一目散にどこかへ走り去って行った。

「まったく。クラウド、大丈夫か?!」
「あ、はい。」
「ザックス、生きてるか?!」
「ひい〜〜ん、何で俺だけこんな目に会わないといけないんだよ?!」

 ルークが二人の無事を確認すると再びクラウドが青い顔をしていた、視線の方向を見るとチョコボが歩いている。
 ルークは苦笑しつつもギザールの野菜を持って歩いていたチョコボをつかまえに行った。
 ほどなくしてチョコボをつかまえてきたルークは、後ずさりするクラウドとにやにや笑うザックスとに迎えられたのであった。

「大丈夫だ、こいつはメスのようだ。」
「さて、俺もつかまえてくるか。」

 そう言ってザックスもチョコボ寄せのマテリアをもってしばし草原をうろつくと、目のクリッとしたチョコボをみつけギザールの野菜を与えると一気に轡をかけた。
 ザックスがチョコボを引いてくると、ルークはクラウドを先にチョコボに乗せ後から自分も乗る。
 ザックスもチョコボにまたがるとコンドルフォートを目指して仲良く轡を並べてチョコボを歩かせて行った。

 やがて間もなくコンドルフォートの官制域へと入る手前で、ルークがチョコボのわき腹を蹴飛ばした。
 チョコボがぐんと加速すると少し遅れてザックスがチョコボを加速させる。

「ほーら!!その可愛い子を渡さんかい!!」

 大声で怒鳴りながらザックスがルーク達のチョコボを追いかけはじめた。

「なぁ…あいつ趣味入ってないか?」
「否定出来ないです。」

 苦笑いをしながらもザックスにあわせるか如くルークが切羽詰まったような声を出した。

「た、助けてくれー!!」

 クラウドが顔を上げると鳥のモニュメントが立っている山が見えてきた、ここがコンドルフォートで反抗組織がこもっている山であろう。
 クラウドがわざとらしい悲鳴を上げた。

「キャーーーーーーーー!!!!!」

 クラウドの声に反応したのか山にくり抜かれた穴から数人がコチラを覗いていた。
 中には一瞬出たと思ったらすぐに引っ込んだのもいた。
 ルークがその山を目指してチョコボを操る。
 麓から数人の男がライフル片手に飛び出して来た所だった。

「た、助けて下さい!!山賊に追われて!!」
「キャーーーー!!!!」

 切羽詰まった状況に穴倉から出てきた男たちが指を差す、ルークがその方向にチョコボを走らせると、穴倉から出てきた男がライフルを構えて発砲した。

 バーーーーン!!!

 発砲されてあわててザックスがチョコボを操る。
 巣穴から出てきた反抗勢力はザックスのチョコボを近寄せないように、ライフルを乱射すると原住民の服を着た男が悪態をつき出した。

「ざけんな!!俺の獲物だ!!」
「死にたくなかったら諦めろ!!」

 また男たちが穴倉から加勢に出てきた。
 10丁以上のライフルがすべてザックスに集中すると、青ざめたような顔をしてチョコボを反転させた。

「ちくしょー!!覚えてろ−−−!」

 あまりにも有名な捨てぜりふと共にザックスはコンドルフォートの官制域から抜けた。

 ルークとクラウドは穴倉から出てきた男たちとは別の穴から出てきた連中に囲まれていた。

「ありがとうございました、おかげで助かりました。」
「いーや、困っている時はお互い様だ。」
「それにしてもそっちの女、凄い別嬪さんだな。」
「ええ、母に似て本当に美人の妹なんですが、すでに婚約者もいると言うのにこうして少し外出すると妹の美しさに目の眩んだ男が掃いて捨てるほど寄ってくるんです。」

 ”婚約者って誰だよ?!”と突っ込みたいのをぐっと押さえて、クラウドはさぞかし心細くてか弱いふりをする。

「兄さん。ここ、どこなんです?」
「ここ?あ、あのどこでしょうか?」
「ここはコンドルフォート、ミッドガルにある神羅カンパニーに抵抗するこの星を愛し、自然をする者達の集まりだ。」
「コンドルフォート…ずいぶんと目的地から離れたな。」
「に、兄さん。足…痛い。」

 クラウドがあらかじめルークと決められていた通りに足を痛がると、周りの男共が青い顔をしてあたふたしはじめた。

「どうした?足をくじいたのか?」
「わ、わかんない。でも痛くて立てない。」

 クラウドの足はあらかじめルークが筋肉の筋を触って、歩けないようにしてあったのである。
 クラウドがその青い瞳にうっすらと涙を浮かべてルークを見あげている。
 軽々とルークが抱き上げると周りの男共に話しかけた。

「すまないが休ませてもらえぬか?」
「お、おおいいぜ。こっちに来な。」

 男達はなにも不審に思わずにルークとクラウドを穴倉の中へと導いた。

 山をくり抜いたすみかにしては、色々と工夫が施されていた。
 武器倉庫やマテリアの倉庫まである所見ると、かなり大人数がここで暮らしているようであった。
 男たちに案内されてテーブルまでたどりつくと、クラウドを椅子に座らせておおげさにほっと息を付きルークもへたり込むように座り込んだ。
 男たちが同情するようにコーヒーをもってくる。

「どうだい、兄ちゃん。」
「ありがとうございます。」
「娘っ子もどうだ?」
「あ、あの。私レイアと言う名前があります。」
「レイアちゃんか、いい名前だなぁ〜〜」

 クラウドの周りを取り囲んでいた男共がぽわ〜〜〜〜んとなっている、その様子を見てルークはこのミッションのやり方を決めた。

(たしかに総司令が言う通り、使えるモノはなんでも使わないと、な。)

 ブラックコーヒーが苦くて飲めないと言うクラウドに、男共がミルクや砂糖をもってくる姿ははっきりいって滑稽である。
(いや、自分が彼女の本来の姿を知っているからそう思うだけで、もしクラウドの事を知らずにこの状態でであっていれば同じことをしていたかもしれないな。)

 などと思いながら、ルークは妹思いの兄貴を演じていた。
 カフェオレにしたコーヒーをちびちびと飲みながらクラウドが窓の外を見ると大きな鳥の形のオブジェが飾られている。
 オブジェは卵を抱いているように作られていた。
 クラウドがその足元に光る物を認めてにこりと笑いながら近くの男に聞いた。
「大きな鳥さんですね。それに足元が光っているみたい。」
「あれか?あれはここの守り神で足元に何かの巣があるんだよ。」
「鳥さんの巣?」
「ああ、近くに行くとつつかれるぞ。」
「こ。恐い」

 青い瞳を思いっきり見開き恐怖に震える姿は男共の保護心をかきたてる、ルークがクラウドのそばに寄り男共を睨みつける。
 ルークがワザとクラウドを庇う。
「レイアを苛めるな。」
「兄ちゃん、優男だと思っていたが妹思いなんだな。」
「あ、でもヒナもいるならちょっと見てみたいな。」

 クラウドが可愛らしく小首を傾げると男共は皆ぼけーーーーっと見惚れているのであった、ルークは妹の頭を撫でながらにこやかに笑っていた。

 その夜、皆が寝静まった後こっそりとルークは窓辺に立ち、鏡をもって外に向かって合図すると遠くから同じようにかすかな晄の合図が発せられていた。
 しばらく鏡の反射を使って何かしていたようであるが、5分も経たずに窓から離れてクラウドの隣にしつらえてもらった寝袋にもぐりこんだ。

 翌朝、朝食後にクラウドの足を見るふりをしながら、ルークはクラウドにこっそりと何かを話しかけていた。
 クラウドは痛みをこらえるふりをしてルークの話に耳を傾けていた。