FF ニ次小説
 翌朝、食事が終るとクラウドはまだ痛む足を引きずって、窓から大きな鳥のオブジェを見あげていた。
 大きな青い瞳がこぼれ落ちそうな程、思いっきり目を見開いていた。

「う〜〜〜わ〜〜〜、本当すっごぉ〜〜〜い…」

 クラウドの感激したような声に反抗勢力の男が一人、二人と近寄ってくる。
 どの男たちも鼻の下を伸ばしにこにこ顔であったので、ルークが呆れたような顔でそっちを見ていた。

「そんなに凄いか?」
「ええ、近くに行ってみたいなー」
「近くに?うーん危なくないかな?」
「え?だって皆さんお強いんでしょ?そんな皆さんが一緒なら大丈夫じゃないのですか?」
「お、おう。そうだな。」

 クラウドににっこりと笑い掛けられて否定出来ずに安請け合いをしている。
(まったく、本当に下手なソルジャーより使えるな。)
 ルークは苦笑を抑えきれずにクラウドに近寄る。

「ダメだよ、レイア。近寄ると何か危険な事があるかもしれない。お前がいくら鳥が見たいと言っても危険な事があったら俺があいつに殺される。」
「あいつ?」
「お前のフィアンセ。」
「あ…。」

 クラウドは一応顔を両手で隠して恥ずかしがるふりをする。しかし心の中では”一体誰の事なんだよ?!”と突っ込みを入れていた。
 ルークはそんなクラウドの様子を”本当に良くやる…”と思いながら話を続けた。
「俺はあいつと約束しているんだぞ、お前を無事送り届けるって。」
「だーって、見たいんだもん。」

 上目づかいに拗ねたような仕草のクラウドの可愛い事、可愛い事、思わずルークですら”こいつ、男だよな?!”と思ってしまうほどである。
 当然その場にいた男共はノックアウト状態であった。

「昨日の夜、あの鳥さんの足元がぴかぴか光ってたの。何が有るのか見たいんだもん。ねえ、皆さん だめ?」

 世にも希な可愛い子ちゃんに甘えられてとろとろに溶けたような顔で男共が首を縦にぶんぶん振った。
(まったく、難攻不落のコンドルフォートの実態は男やもめの集団かよ?!)
 苦笑を必死に抑えている為ルークは顔をしかめさせていた。
 そんなルークの顔をみて男の一人が何かポケットから取り出そうとする。

「大丈夫だ、あんちゃん。何かあった時は神様が守ってくれる。俺達には神様が付いているんだ。」

 そう言ってルークに見せびらかすように丸くて光り輝いている物を見せびらかした。

(あれは特殊マテリア?!)

 ルークが一瞬のうちにそのマテリアの力を読み取ろうとするが、流石にもう少し近寄らないとわからない。
 するとクラウドが特殊マテリアを持つ男に目を丸くしながら近寄った。

「なんですか?それ。綺麗なガラス玉ですね。」
「なんだ?娘っ子。これがなんだかわから無いのか?」
「だって、ガラス玉でしょ?でも綺麗ですね。」
「そーか、娘っ子にはガラス玉にしか見えないか。これはマテリアと言ってこの星の命のかけらだ。」
「コレで何が出来るんですか?」

 クラウドが男の手のひらにあったマテリアをちょいとつまみあげる。
 クラウドの問いかけにコンドルフォートの男共が答えに困っていた。
 それはそうであろう、普通のマテリアはある程度きたえた者であれば魔力が有れば操れる、しかしそのマテリアが特殊であればあるほど発動させるには特殊な能力が必要なのであった。
 そしてこのコンドルフォートには、目の前の特殊マテリアを発動出来る男は誰も居なかったのであろう。
 だから答えられずに困っているのであった。
「え?あ、あの…」
「何が出来るって…」
「何が出来たっけ?」

 1stソルジャーのルークが瞬時に見抜けなかっただけあって、どうやら特殊過ぎてまだ発動出来ていないようであった。
 クラウドがそのマテリアを通して日の晄をのぞき込んだ、ルークがこっそりと手のひらの中に何かを隠して近寄った。

「レイア、だめだよ。大切なモノなんだから…」

 あくまでも自然にクラウドからマテリアを取り上げて、そのまま男に返したようにみえたが手の中にあったただのガラス玉とすり替えられていた。
 しかしそれのわかる男はここには誰も居なかった。

 クラウドがつまらなそうな顔をして再び窓の外を覗き込んだ。
 その時平原のかなたに何か光るモノを捕らえた。

「あ、あっちの方向になにか光った。」
「なんだって?!」
 あわててクラウドの指差す方向を男たちが確認する。
「皆に知らせろ!南西の方向に何かあるぞ!」
「官制!!早く知らせろ!!」

 一気に穴倉が騒がしくなってきた。
 あっというまに戦闘態勢に入る男共に気圧されてクラウドがしりもちをついた。

「キャン!!」
「お、わるい!!すまんが危なくない所に引っ込んでいてくれ。」
「あ、は・はい」

 クラウドが立ち上がるとあわててルークの元に歩いていく。ルークはとまどっているようにみえるがそうでない事は近くに行ってわかった。
 クラウドに聞こえるだけの声でルークが囁いた。
「いいか、まもなく隊長達がここを襲う。」
「…では、足を。」
「ああ、そうだったな。」

 ルークがクラウドの足をちょいと撫でるとちょっと痛みを感じたが、今までのような違和感が無くなった。
 かるく屈伸運動をすると今までのような引きつるような痛みは無い。
 これならば全力疾走も可能であろう、クラウドがルークにうなずいた。

「OKです。」
「じゃあ、いくぞ。」

 二人でヒソヒソと話しているので戦闘準備をしている男共にはまったくわからない。
 ルークが慌ただしく動く男共に声をかけた。

「あ、あの。足手まといにならないような場所はありませんか?」
「お?すまねえな。左の穴から右、下と行けば秘密の通路が有る。その先は外に出られるがこの穴はまだ知られてない。そこにでも隠れていて危なくなったら脱出しろ、いいな。」
「は、はい!」

 ルークはうなずいてクラウドをともない指示された通の場所に待機した。
 そしてジャミングを確認してから通信機を取り出す、決められた信号を送信すると一息ついた。

「あとは時を待つだけだな。」
「何故、あの人達カンパニーに反抗するんだろう?」
「お前は優しいな。だが何が有ろうと俺達はカンパニーの手駒には変わらないんだぞ。」
「うん。」
「そして、あと数時間後には俺達はあの人達を裏切ることになる。わかっているな?」
「…うん。」

 クラウドが少し引きつった顔でうなずくのを確認すると、ルークはシャツの衿に小さくして隠していたソードを元のサイズに戻しバングルを装備する。
 クラウドも治療と回復のマテリアを装備したバングルをはめる。
 ルークがクラウドに自分のバングルから何かのマテリアを外して渡した。
 クラウドが受け取ったマテリアは”敵の技”だった。

「お前は以前このマテリアで俺の部下達をボコボコにしたからな、使えるんだろう?」
「あ…はあ。」

 ルーファウスにそそのかされて護衛をさせられた時に、クラウドはそうとは知らずに確保に来た一隊のソルジャー10人ほどをノックアウトした事があった。
 その時に使ったのが敵の技のマテリアだった。
 クラウドの瞳が強いモノになったのを確認し、ルークは隠し扉を少し開けて外の様子を覗いて見た。
 下の方から仲間たちが上がってくるのが見える。
 どうやらこっち側の配備は手薄になっているのか、それとも断崖絶壁になっているからこちら側からは来ないと踏んでいるのかまだ戦闘にはなっていなかった。
 ルークがこっそりと扉を開けるとロープを垂らす。
 ソルジャー達の上がってくるスピードが速くなった。

 クラウドは決められていた通りの行動に出る。
 中の様子を確認しながら穴を元の場所へと移動すると、誰も居なくなった居室の窓からそっと外を覗き込んだ。

 下の方に銀色に輝く晄が見える。
 セフィロスの髪が日の光を浴びて輝いているのであろう、その光を目指してクラウドが持っていた手鏡で光を反射させる。
 すると下の方から何かの光が帰ってきた。

 しばらくするとルークがクラウドの元へとやってきた、光の合図の回数を聞くと満足してうなずく。
 やがて下の方からライフルの発射音と男たちの声が聞こえてきた。

「クラウド、5分たったら飛び出すぞ」
「アイ・サー!」

 反対側ではすでにかなり激しい戦闘になっているようで、罵声と怒号とライフルの発射音の飛び交う中、約束の時間が来た。
 ルークがソードを片手に窓から飛び出して行くと、その後を追い掛けるようにクラウドが飛び出して行った。

 いきなり上から切り込まれて反抗グループがあわてはじめた。
 クラウドも足場を確保しながらホワイトウィンドを自分にかけつつ、トラインの魔法を放つ。

 反抗グループのライフルに落雷するとはずみで暴発した。
 暴発した弾がクラウドの足場にしていた岩を崩した。

「あ!!!」

 足元が崩れクラウドが逆さになって落ちて行くのを見て、ルークがあわてて駆け降りて確保に走ったがクラウドの落下速度の方が速かった。

「わあああああ!!!!」

 反抗グループがあわてて振り返る横を一陣の風が通り過ぎた。
 セフィロスが落ちてくるクラウドをがっちり抱き止めて、地面に向かってレビデドの魔法をかけ、ふわりと安全な所へと舞い降りる。
 クラウドがセフィロスによって助けられたをの確認すると、ホッと安堵したルークは改めてソードを握りなおした。
 セフィロスが前線に居るザックスに声をかけた。
「ザックス!!しばらく頼む、クラウドを安全な所に下げたら戻る!」
「おうよ!それまでに終らせてやるさ!!」

 クラウドはセフィロスに姫抱きにされたまま、後方に待機していた部隊まで下がった。
 待機部隊にセフィロスがクラウドを手渡した。
「ジェフ、クラウドを頼む。」
「アイ・サー!!」

 後方部隊を任せられていたジェフがクラウドを受け取ると、セフィロスがきびすを返すように戦場に戻って行った。
 後方部隊に交じったクラウドはさながら紅一点、部隊の隊員達にちやほやと世話を焼かれていたりします。

「ストライフ、何か飲むか?」
「ほら、そこの椅子にでも座っていろ。」
「あ、ありがとうございます。でも…」
「でもも何も無い、お前の仕事は終ったんだ。あとは我々ソルジャーの仕事だ。」
「はい。」

 ジェフのいう通り自分が何かをやれるわけではないので、クラウドはバックヤードに下がって行った。